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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十七話 重臣として
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れを行う上で最初に手をつけたのは実態調査だった。正しい情報無しには何も出来ない。この事は十月十五日の勅令が発布された後、直ちに実行されたのだが、はかばかしい結果が上がらなかった。

門閥貴族達が協力しないことは分かる。しかしそれ以外の貴族達、辺境に居着いている在地領主達もこちらには非協力的だった。当初我々はその事をこちらに協力することで門閥貴族達に睨まれる事を恐れてのことだと思っていた。

しかし内乱終結後も状況は余り変わらない。こちらの要求にも何処か懐疑的で協力要請には消極的な態度が目立つ。そして何より気になるのは各省庁の官僚達の間にも辺境星域の開発に消極的な態度が見えることだった。

何が起きていたのかが判明したのは最近になってからの事だ。リヒテンラーデ侯を問い詰めようやく分かった。これまで政府が辺境星域を無視してきたことが大きく響いている。我々は今そのツケを払わされようとしているのだ。

貴族達が非協力的、官僚達も消極的、本当なら自分の目で辺境を視察し、現地の貴族達と話したいところだが、やらなければならないことは他にも有る。オーディンを離れることは出来ない。そんな状況だったから司令長官に辺境の視察をお願いしたのだが、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった……。

「止むを得ないことでは有る。辺境の貴族達は我ら旧来からの政治家など信じてはおらぬ。卿らのこともだ、改革派、開明派として知られていても本当に官僚達を動かす事が出来るか、彼らは疑っているのだ」

思わず顔を顰めた、私だけではない、ブラッケもゲルラッハ子爵も発言者のリヒテンラーデ侯も顔を顰めている。確かに侯の言う通りなのだ。辺境に関しての官僚達の反応は嫌になるほど鈍い。彼らを使って辺境星域を開発するのは容易なことではないだろう。

「しかし、それは司令長官も同じでしょう。内政家としての実績などありませんし、各省庁に対する影響力だとて我々以上に有るとは思えません。貴族達は一体何を考えているのか……」

ブラッケが小首を傾げながら呟くように吐いた。そんなブラッケをリヒテンラーデ侯が哀れむような視線で見て首を振った。
「分かっておらぬの、確かにヴァレンシュタインには内政家としての実績は無い。しかし、あの男はやると言った事は必ずやるからの」
「……」

「十月十五日の勅令発布の折、改革に反対するものは叩き潰すと言った。その通り門閥貴族は潰された。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯も陛下の女婿であるにもかかわらず潰されたのじゃ。辺境星域の貴族達にとっては信じられぬことであろう」
リヒテンラーデ侯が何処か感慨深げに話すとゲルラッハ子爵が神妙な表情で頷いた。

「貴族達はの、ヴァレンシュタインの内政家としての実績を信じたのではない、あの男そのものを信じたのじ
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