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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第九話 招待
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あったな。本多佐渡守のことは知っているな。その右が井伊侍従直政、左が本多中務大輔忠勝だ」
「小出相模守、私は井伊侍従直政だ。よろしく頼む」

 俺と共達二人は頭を下げる。この男が井伊の赤鬼か。偉そうなのは俺より官位が高いからだろう。この時期の井伊直政の官位は従四位下侍従で徳川家中で唯一の従四位下の官位を与えられたはず。期待の新鋭の若手といったところか。偉そうになるのも頷ける。

「『井伊の赤鬼』と勇名を轟かす井伊侍従様にお会いできるとは嬉しく思います」

 俺の誉め言葉を当然という態度で受け入れていた。井伊直政の勇名は勇猛で知られる武田旧臣を徳川家康の計らいで優先的に家臣団に組み込むことが出来たからだと思っている。まあ、井伊直政自信も阿呆では無いと思う。阿呆では没落したとはいえ武田旧臣も大人しく仕える訳がない。

「小出相模守殿、私は本多中務大輔忠勝にござる。以後お見知りおきを」

 本多忠勝は見た目と異なり井伊直正に比べ礼儀正しかった。厳つい風体なだけで常識人に見える。

「関白殿下より『東国一の勇士なり』と称された本多中務大輔殿に会えること嬉しく思います」
「大したことではござらん」

 仏頂面の本多忠勝は謙遜しながら俺の言葉を否定した。あまり誉められることは好きじゃなさそうだ。この人は三河武士らしい人だな。本多忠勝の口振りに井伊直政は憮然とした様子だった。



「互いに自己紹介も終わったな。小出相模守、ささやかながら料理を用意させてもらった。存分に楽しんでくれ」

 徳川家康が笑顔で俺に声をかけてきた。百三十万石の大大名の饗応だ。どんな料理なのか凄く楽しみだ。毎日食べる玄米飯山盛りと味噌汁も美味しい。でも、たまには美味い物が食べたい。できれば猪肉か鳥肉が食べたい。最近、仕事が忙しくて山に狩りににいけない。お陰で肉も魚もご無沙汰なんだ。
 小姓達が現れ膳を配膳してくれた。膳は三つ。一つの膳には素焼きの徳利が乗っかっていた。酒だろう。俺は無視して料理に視線を落とす。見た瞬間は沈黙してしまった。
 これは。俺は言葉を失ってしまった。
 料理の豪華さに驚いたんじゃない。その粗末さに驚いてしまった。
 料理の品目は、

 ・麦飯
 ・めざしの天日干し二匹
 ・根菜たっぷりの赤味噌の味噌汁
 ・きな粉をまぶした団子

 だった。
 俺は徳川家康になんと言えば迷ってしまった。だが、このまま黙っているのもまずいような気がする。
 俺は気まずく思い目だけ動かし隣の様子を窺った。俺の直ぐ隣りの秀清は分かりやすく落胆の表情を浮かべていた。分かりやい奴だな。五郎右衛門は変わらぬ仏頂面でめざしを無造作に掴みかぶりついていた。この状況で徳川家康が飯に毒を盛る利はないから問題ないと思う。五郎右衛門もそう思ったか
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