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提督はBarにいる・外伝
ほっぽと御馳走の山
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姉ちゃんである港湾棲姫からクレヨンと画用紙を貰っていたのです。そこに『コレ カエス  ホッポ』と書くと、その場に木箱を置いてそこの下にメモを挟みました。これで誰かが見つけてくれる筈です。

「ヨシ、カエロウ!」

 そうほっぽちゃんが決意した瞬間、お腹がグウゥ……と鳴りました。どうやら、ほっぽちゃんの身体はまだ帰りたくないようです。




「オナカ、スイタ……。」

 帰ろうという発言に抗議するように鳴ったお腹をさするほっぽちゃん。 何か食べ物があって、空腹を満たす事が出来れば元気一杯に帰る事が出来そうなのですが……。と、何やらいい匂い。

「コッチダ!」

 ほっぽちゃん、お腹ペコペコなのも忘れていい匂いの方向に走り出しました。そこには、「烹炊所」と書かれていますが、ほっぽちゃんには読めませんし、意味も解りません。しかしいい匂いはここから漂ってきます。そう、ここは料理を作る為のスペースであり、提督や間宮さん、伊良湖ちゃん、鳳翔さん等が協力して準備したパーティのご馳走が山積みになっています。




「オ、オジャマシマス……。」

 ほっぽちゃん、誰も中に居ない事を確認すると、部屋の中に忍び込みます。その部屋のテーブルの上には、柏餅や粽(ちまき)、ちらし寿司等のお祝い事に供される料理に加え、鯛、鰹、筍、豆、海老、蓮や蓬といった縁起のいい食材を使った料理や唐揚げ、フライドポテト等のオードブル、ケーキといったご馳走の山が所狭しと並んでいました。

 ゴクリ、と生唾を飲み込むほっぽちゃん。泥棒はいけない事ですが空腹には変えられません。

「ダイジョウブ、コレハドロボウジャナクテ『ギンバイ』ダカラ、ダイジョウブ……。」

 どこで覚えたんでしょう、その言葉。というより、誰が教えたんでしょうか。とにかく、ほっぽちゃんは手近に有った柏餅を1つ掴んで、柏の葉っぱごとかじりつきます。本当は柏の葉っぱは食べないんですが、そんな事ほっぽちゃんは知りません。

「オイシイ!」

 思わず叫んでしまって、慌てて口を抑えるほっぽちゃん、うっかり忘れていましたが、ここは敵地のど真ん中です。しかし、美味しい。こんなに甘くてモチモチしていて、美味しい食べ物は初めて食べました。

 深海には元々、食材が多くありません。せいぜいが魚に深海にいる海鼠や蟹、ごく稀に人間から略奪した食料が食卓にのぼる程度で、ほとんど『料理』や『お菓子』という物を食べた事が無いのです。そこに『提督はBarにいる。』の提督さん特製の料理です。ひとたまりもありません。一瞬で罪悪感など消し飛び、色んな食べ物を泥棒……いえ、ギンバイしていきます。

「フゥ……マンゾク!」

 一人で1/10程を食べ尽くしたほっぽちゃん、ふとある事を考えます。


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