暁 〜小説投稿サイト〜
豹頭王異伝
曙光
治癒の感触
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 魔王子アモンの術に陥り、心を閉ざした騎士達の前で。
 アルド・ナリス最愛の弟、吟遊詩人の若者が歌い始める。

 君は、1人じゃない。
 僕が、傍に居る。
 決して、君を見捨てはしない。

 現世への関心を喪い、凍り付いた心の内部に。
 マリウスの優しい歌声、キタラの旋律が浸透する。
 アモンの施した黒魔道の術を透過して、温もりが伝わる。

 氷が、少し、溶ける。
 永久凍土の様に、総てを拒絶する鎧。
 凍り付いていた感情が、融ける。


 暖かい歌声が響き、また少し、氷が溶ける。
 感情が甦り、癒され、昇華する。
 氷の熔けた分だけ、重量が減る。

 バランスが変わり、心が微かに揺れる。
 僅かに動いた心の隙間から、歌が浸透する。
 温もりが伝わり、凍り付いていた感情が融ける。

 様々な感情の解凍、溶融、昇華。
 サイクルが繰り返され、少しずつ、闇が薄れる。
 感情が昇華し、心の重量が変化する。


 眼が見えず、耳も聴こえず、泣く事しか出来ぬ赤子。
 無限の闇に包まれた孤独な魂を温め、慰藉を与える《もの》。
 不安と恐怖の底無し沼から、赤子を救い出す唯一の手段。

 抱き締める事で《心》を癒し、護ってくれる暖かい感触の様に。
 マリウスの歌が響き、沁み込んでゆく。
 アモンの植え付けた残留思念、罠を匿す(カーテン)が揺れる。

 透明な実体を持たぬ歌の響き、マリウスの声が《心》を癒す。
 赤子を抱擁する暖かい感触の様に、凍り付いた感情を融かす優しい歌声。
 音の精霊が《心》を蝕み、縛り、凍らせる頑強な《くびき》を(ほど)き始める。


 ヤンダル・ゾックの操る黒魔道の術、異次元の微生物。
 本人も気付かぬうちに脳細胞を喰い荒し、廃人と化す《胞子》の様に。
 心を蝕み、活力を奪い、生命力を萎えさせる魔物の様に。
 心の養分を吸い取り、無限に増殖する悪性の癌。

 心の闇に潜み、他の部分にも密やかに忍び込み、浸蝕して領域を拡げる《悪の種子》。
 無限に繰り返される連鎖を創り、活力(エナジー)を奪う(マイナス)の思考回路。
 人の心を闇に導き、実体を持たず、眼に見えない精神生命体。

 誰にも気付かれず、夢の回廊を通じて植え付けられた魔術(マジック)の種。
 アモンの分身が増殖、拡散、浸蝕を繰り返した《心》の裡に。
 マリウスの歌が響き、光の波動と化し、呪縛を熔かす。


 凍り付いていた感情が蠢き、闇が薄れる。
 光の波動が増幅され、拡散して、心を隅々まで照らし出す。
 心が温かい感触、太陽の波動で満たされる。

 グラチウスが迂闊に暁の魔女、アウラの名を口にした時の様に。
 グインの裡から爆発的な《パワー》が溢れ、《生涯の檻》を
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ