暁 〜小説投稿サイト〜
鋼殻のレギオス IFの物語
第二章 【Nameless Immortal】
肆 裏/表の接合点
[1/26]

[8]前話 前書き [1] 最後





「十分な睡眠が取れるというのは歓迎すべきことだね」

 その日のお昼頃、デスクに置かれた書類をカリアンは処理していた。
 いつもの生徒会長室とは違い、普段は他の役員が業務を行う一室だ。
 幾つもあるデスクにはカリアンを含め何人かの役員が座っている。

 生徒会に所属する生徒は二種類いる。
 一つはカリアンを始めとした純粋に生徒会に属している生徒。会長や副会長といった被選考者や関係者からの推薦・承認で属することになった者。
 二つは他に役職を持ち副次的に属している生徒。それぞれの科長や各種委員会の役員は職務の関係から生徒会に属する事となっている。

 その内の一人、不健康そうな顔の医療科科長が雑な字の走らせながら答える。

「全くだ。会長もやっとその事に気付いたか」
「研究に現場に雑事と君は君で大変だろうね」
「腐るほどいた怪我人が片付いたと思ったら今度はクレームだ。新米のせいで腕が無くなっただの対処が遅かったから死んだだの訴訟起こしやがって。会長は司法研究科だろう。実務経験がわりに安請け合いする馬鹿ども止めてくれよ」

 カリアン・ロスの所属する司法研究科は都市における司法の在り方を模索する場だ。
 上級生の中には裁判所において役割を有する生徒も存在している。

「訴える権利は誰もが有する。過程に不備が無ければ何も言えないよ」
「不祥事の言及はいい。だが仕事は選ばせろ。どいつもこいつも暇しやがってよ。そのせいで心病んだ奴も出てる」
「医者の不養生、とは違うか。その辺も問題だね」

 医療は人の命に係わる。だからこその責任もある。
 理由と結果はどうであれ訴えられればメスを握る事への恐怖も生まれる。
 無論、訴える側をただ抑止していいわけでは無い。彼らも被害者である。
 
 また、司法研究科の生徒が悪い面もあるのだ。
 非が無いなら堂々としていればいい。非があるならば私は正義である。
 自分とは無関係だからと相手のストレスを考慮しないものが一定数いるのだ。
 特に休業中だからと空いた時間で活動的になっている者もいる。

 だが手持無沙汰を呼ぶ余暇が原因の一端にあるのなら、多少は軽減されるだろう。
 来週から授業も一部が再開される。午前中のみの短縮講義が一週間続き、その後に以前通りの学園活動が開始される。
 そのため来週になればカリアン達の仕事も随分と落ち着くはずだ。

「話は変わ……いや、戻すが、眠気対策に栄養剤の類をここ暫く大量に飲んでね。前に話してくれたのは君だったかな? 私もエナドリや栄養剤の利き舌が出来るようになったよ」
「いや、それは私だ」

 錬金科長が小さく手と声を上げる。
 色褪せた白衣を着た痩身の……いや、痩せすぎていると思える男性だ。


[8]前話 前書き [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ