暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第21話 ラーカッサの猛威
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 空気が、変わった。

 今のこの瞬間、俺が感じたことをそのまま言葉に形容するなら、それが一番相応しいだろう。今までのラーカッサとは、明らかに気迫が違う。

 その威圧に一瞬、硬直したこと。それが命取りとなった。

「がッ――ああッ!?」

 冷たい激痛と共に、白い戦闘服が瞬く間に赤く染まる。まるでラーベマンのように。

 その傷口は、五つの線の形になっていた。

 光線銃より速いスピードで間合いを詰めた彼女の爪が、俺の胸をザックリと裂いたのだ。

 目にも留まらぬ速さで攻撃されたのはこれで二度目だが、受けた傷の重さと痛みは段違い。

 ――当たり前だ。向こうは本気になってる上に、こっちは鎧を外して身軽になっている。ダメージが増えるのは当然の結果だ。

 達城も、この身体的なリスクを苦慮して、今まで俺にも教えなかったんじゃないか。なんでこんな簡単なこと、少しの間とはいえ忘れてたんだ!

 俺は自分に腹を立てると共に、後ろを振り返った。桜田家を巻き込んでいないか、不安になったからだ。

 そこには、家族三人で身を寄せ合う彼らの姿があった。
 みんな、見たことのないセイントカイダーの姿やラーカッサの本気を目の当たりにして、呆気に取られているようだった。

 その中でも、特に舞帆は心配そうな表情でこちらを見詰めている。

 ――なにをやってんだ、船越大路郎!

 舞帆を守るって、もう何度決めたと思ってる! さっさと立て、立って戦え!

 俺は自分自身に無茶苦茶に喝を入れて、セイトサーベルを杖に立ち上がる。

「さて、とっておきの本領はまだ? それとも――もうネタ切れ?」

「だな。……だから使いまわしだッ!」

 ホルスターからの早撃ちで、俺はセイトバスターを撃つ。

 深紅の光線がラーカッサの胸に真っ直ぐ飛んでいく。

 だが、彼女はその射速さえ凌駕していた。

 一瞬だけ照準から姿を消したかと思うと、次の瞬間には俺の目の前で不敵に笑っていたのだ。

「そのネタ、もう古いんだよ!」

 鋭い回し蹴りが俺の脇腹をえぐり、更に鮮血が辺りに飛び散る。
 俺が流血してうめき声を上げる度、後ろの方から悲鳴が聞こえた。

「ああ、そうだ。アンタ、確か所沢に背中を刺されてたわよね」

「――!」

 たったその一言が、俺を凍り付かせた。

 これからどんな攻撃をされるのか。

 それを想像して総毛立った頃には、彼女は既に俺の背後を取っていた。

「ダメよ、怪我人が暴れちゃあ」

 皮肉と共に、ラーカッサの拳に内装された弾薬が破裂した。

 俺の傷を、根掘り葉掘りえぐり尽くすように。

「……か……ッ……!」

 悲鳴は、聞こえなかった。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ