暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第10話 初恋の思い出
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」とホクホク顔。その通り、俺はその気になった。

 何たって、文倉がそこを狙うって言うんだからな!

 普段以上に机に向かい、普段以上のペースで過去問を解く。今まで必要としていなかった参考書にまで手を伸ばし、「十分でわかる英会話」などと胡散臭いタイトルを次々と買い込んでいった。

 それでも塾には通わなかった。文倉と話す時間が減るからだ。

 俺は文倉が通う塾の近くで待ち伏せては、勉強を終えた彼女を癒そうと喫茶店に誘ってコーヒーをおごった。

 典型的な文学少女であった彼女は俺にいろいろなこと(特に国語と古文)を親身になって教えてくれた。

 交通事故で両親が亡くなってから、加室孤児院(かむろこじいん)という養護施設で暮らしているという身の上を聞いてからは、なんとか力になってやりたい、とも思うようになった。

 歩くときは歩調を合わせ、街を渡るなら自分が車道側に立つ。
 デートの鉄則も忘れない。向こうはそんな認識はないんだろうけど。

 そんな折、年末と共に舞い込んできた模擬試験の結果が帰ってくる。

 俺も文倉も、かなりの高評価。二人揃って手を合わせて歓喜した。

 これで上手く合格すれば、もっと文倉と話せる、もっと文倉と仲良くなれる。
 そんな淡い期待を抱く俺に、彼女は願ってもみない提案を投げ掛けた。

「ね、ねぇ……船越君」

「どうした? お腹空いたのか?」

「い、いやその、そうじゃなくて……」

 胸の前で指を絡ませて、頬を染める彼女の姿に思わずクラッと来てしまいそうになるが、グッと堪えて文倉から目を離さないようにする。

 そして、彼女の発した次の言葉に、俺は凍り付いた。嵐の前の静けさの如く。

「もし……もし受かったら、私達、な、名前で呼び合って、みない?」

 硬直。

 体の奥にある全てが凍り付き、それに比例して全身が動かなくなる。

 そして、今度は凍った体の最奥にくすぶっていた熱がところせましと暴れだし、やがてそれは全身の氷を溶かしていく。

 その勢いは体中が氷解してからも留まることなく、彼女の前でその熱は暴発し、狂喜という形になって噴火した。

「――ぶはああああッ!」

「きゃあっ!?」

 体内から火山が爆発したかのように全身で衝撃を表現する俺の姿に、文倉は慌てて腰を抜かす。

「い、い、いいのか!? いいんだよな!? 嘘ついたらハリセンボン!」

「ふ、船越君、鼻血すごいよ……」

 混乱と喜びでわけがわからなくなっていた俺に、彼女はややビビってる様子。
 それでも、俺を拒絶することはなかった。

 付き合いはほんの半年足らず。

 たったそれだけの間でも、俺は彼女に十分過ぎるほどに惹かれていた。

 
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