暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
本編 生裁戦士セイントカイダー
第6話 両手に花……?
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 両手に花。

 それは、男にとっては悠久なるパラダイスであり、男の人生においていかなる場合でも誇りとなる、千載一遇にして最大の幸福への懸け橋である。

 少なくとも、俺はそう信じて疑わなかった。少なくとも、今日までは。

 バッファルダと一戦交えてからまるまる十日が過ぎ、スーパーヒーロー評議会や警察の力添えもあってようやく授業が再開したころ、平中から映画館の誘いが来たわけだ。

 一匹のオスである俺にとって、これは正しく天命と言えよう。
 別にまだそんなに大それた関係でもないが、これは忘れ難い一日となる。そう確信したんだ。

 そして当日の待ち合わせ場所にたどり着き、平中と遂に顔を合わせたと思ったら、

「あら? 船越君、そんなところで何を……」

 ショッピング帰りなのか、両手に袋を持った舞帆とバッタリ。
 待ち伏せ型のストーカーなのか、あんたは。

「いや、なに。実は俺にも春が来ちゃってさあ」

「ふぇ!?」

 情けない声を上げたかと思うと、持っていた袋を落とすほどに驚愕した顔をする。

 ……こいつめ、俺が女の子にモテるのがそんなに意外か。

 まぁ確かに俺にとっても滅多に経験できないコトなんだけど。

「そ、そう。それは良かっ……」

「船越さん、早く行きましょッ! バイトのお給料貰ったばかりですから、弾んじゃいますよッ!」

 舞帆を遮るように可愛らしく跳ね跳びながら、平中は俺の腕に自分のそれを絡ませる。

 前は恥じらいの様子さえ見せていたのに、今回はむしろ積極的とすら思えてくる。
 何かの心変わりか?

「ダ、ダメよ! やっぱりダメ!」

「はい!?」

 なんと、今度はさっきまで一応は祝福してくれていた舞帆が、いきなり反旗を翻してきた。

「女の子なんかと付き合って余計に腑抜けたら卒業だって怪しくなるわよ! ただでさえ成績が酷いんだから!」

「それくらい平気ですよぉ、勉強なら私が見てあげますから」

 絡ませた腕を擦り寄せて、柔らかい感触で俺の感覚を刺激していく。

 そんな平中を怪しむように見据える舞帆は、何度か咳ばらいすると、腕を組んで俺達の前に宣言した。

「……なら、私が全責任を持ってあなた達を監督します!」

 △

 こうして、俺達は三人で映画館に向かうことになった。
 しかも、なぜか舞帆が持っていた袋まで持たされて。

 普通なら「両手に花」と歓喜するとこなんだろうが、この二人から蒸気のように吹き出してくる殺伐としたオーラが、そんな華やかなイメージを細切れに引き裂いてしまう。

 舞帆も平中も満面の笑顔で劇場へ向かうが、その目は一欠けらも笑っていない。

 そう、これは言葉で例えるなら「修羅場」。

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