暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
出撃・礼号作戦!〜まるで遠足終わりのバスのように〜
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しいとの要望だったが、流石にその余裕は無かった。




 元帥のジィさんも明日から大忙しだろう。何せあのタイミングでの深海棲艦の奇襲、そしてそれを援護した某国の戦闘機。協力関係にない国家と気脈を通じている輩が上層部にいる、という事だ。膿は絞り出してしまわなければならない。

「その内視察に窺わせて貰う」

 と言っていたが、大方飯と酒目当てだろう、どうぞお帰りくださいと言ってやりたい。まぁ、大忙しなのは俺もだが。

 船では後2〜3日の道程だという。鎮守府に着いたらいつもの如くの大宴会、そしてあっという間にホワイトデーだ。チョコをもらっていない奴にも、不公平にならないように全員に渡しているから大変だ、今から材料を仕入れて作っていかないととても間に合わない。それに、今回はちょっとした趣向を用意してあるからな、その準備も進めないといかん。仕事の事よりも菓子作りに気を割いているのだから笑えてくる。……まぁ、艦娘のメンタルケアも仕事の一環と捉えればこれも仕事か。作るのは苦じゃねぇし、それなりに楽しくやるさ。

 空を見上げれば満天の星空。普段は騒がしい位の奴等が乗っているのに、今日は静寂に包まれている。

旗艦の重責を果たした長門も、

久しぶりの出撃で疲れたであろう陸奥達も、

最終決戦で空母棲姫を撃沈した鳥海も、

礼号作戦から出ずっぱりの嫁艦達も、

時雨や夕立、後から合流したメンバーも、

観艦式に出席した隼鷹達も。

 皆、今宵ばかりはいい笑顔で夢の中だろう。苦しいながらも楽しかった戦闘の記憶を思い出しながら、まるで遠足の帰りのバスの中のように。

「……って、それじゃあ俺は引率の先公かよw」

 再び独り言のように呟いて、また苦笑してしまった。あんな一癖も二癖もある連中を纏める先公だとしたら、ストレスで毛根がマッハだったろうな。そう思いながら更に笑う。

 少し笑ったら気も紛れた。俺も笑顔で夢の中に行けそうだ。そう思って火を点けた3本目の煙草を吸い終えると、船室に戻った。道程はまだ、長い。
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