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提督はBarにいる。
ちょっとだけ、提督の昔話B
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 そんなこんなで始まった、将棋勝負。折り畳み式の簡素な将棋盤を広げ、手早く駒を並べていく。

「では、始めるとするかのぅ。」

 先手は元帥。迷いなく歩をつまみ上げ、パチリと将棋盤に打つ。

「そんなに力入れて打つようなモンじゃねぇだろ。」

 対して男は気張るような様子もなく、あくまでも気楽にゲームでも楽しむかのようにパチッと打つ。何度か二人の対局を見た事があるが、実力は五分五分といった所。元帥は攻めが上手く、男はそれをのらりくらりとかわしていく。

「しかし……勿体無いのぅ。」

「あ?何がだよ。」

 二人は差し合いながら会話を重ねていく。

「これだけの差し手なら、さぞ艦隊の運用も上手かろうと思うてな。」

「将棋と海戦は違うだ……ろっ!」

 バチン!と威嚇するかのように強く音を出す男。元帥の狙いを読んで牽制したつもりか。盤面を見ると男は早々に矢倉囲いを組み上げて守りを固めている。元帥は徐々にではあるが考える時間が延びているようだった。僅かずつだが、押されている。

「そうでもないじゃろう。将棋も艦隊の運用も、大局を見据えて先を読まねばならん。」

「だからってな、俺にゃ提督なんて重荷は無理だ。」

 パチッ、パチッと1手1手、差す音が響く。会話を交わしながらだが、盤面は激しい攻防が繰り広げられている。




「勝手ながらな、お主の経歴を調べさせてもらった。」

 パチリ、と駒を差した男の手が止まり、元帥を睨むような目線を投げ掛けていた。当然、大本営に出入りするような人物だ、身辺調査は入念に行われる。その資料を追い掛けたのだ。

「高校は工業系の高校、中々優秀だったようじゃな?」

「その後何を想ったか整体師の資格を取って開業……随分と大胆な方針転換じゃな?」

 その間も差す手は止まらない。男は黙り込んだままだった。

「け、生憎と座学が嫌いでね。手に職を付ける目的で選んだ進学先だった。」

「工業系の技術は嫌いじゃなかったけどな。それよりも整体師の方に興味が出てきたのさ。」

 盤面は中盤から終盤に差し掛かったといった所か。互いに駒を取り合い、盤上にある駒は少なくなってきていた。

「フム……、やはりそれは柔道をやっていた経験からかの?」

 そう、この男は柔道に学生時代打ち込んでいた。黒帯は取っていないようだったが、高校時代には全国でもかなりイイ線まで行っていたようだ。

「ジィさん。まさかストーカーとかじゃねぇよな?……冗談だよ、冗談。天下の元帥閣下がストーカーなワケがねぇ。」

 今度は元帥の手がピクリと痙攣したように震え、手が止まった。

「…………知っておったのか。」

「ココに来るのはアンタ等だけじゃねぇんだ。他の職員
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