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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十四話 キュンメル事件(その2)
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有ったんだ。

マリーンドルフ伯からは謝罪があった。自分がハインリッヒにきちんと話しておけばこんな事にはならなかったと悔やんでいた。仕方が無い事だ、俺がその立場でも男爵には何も言わないだろう。伯には気にするなと言ったが、彼にとっては今回の事件は俺の父の死の一件と共に苦い思い出になるだろう。

そんな事を考えているとフェルナーがやってきた。フェルナーは軍服を着ていない。どうも妙な感じだ、あまり似合っていない。フェルナーとアンスバッハは捜査局に居るのだが身分は軍からの出向という事になっている。

フェルナーの話ではキュンメル男爵は素直に聴取に応じているようだ。もっとも疲れないように一日二回、午前と午後に一時間ずつの取調べだ。フェルナーはもどかしい思いをしている。

応接室に通すと早速フェルナーが話しかけてきた。
「参ったよ、地下室にはゼッフル粒子が充満していた。もし爆発したら天井まで吹き飛んでいただろう」
「今は、大丈夫なのかい?」
「ああ、一昨日の昼までかかって地下室の空気を入れ替えた。作業員達はヘトヘトさ」

「それで、何が分かった?」
「屋敷から消えた人間が居る。半年ほど前に雇われたらしい。彼の部屋を調べたが特に気になるものは出なかった。ただ、屋敷の人間に聞いたが彼は例の宗教を信じていたらしい」

やはりな、例の連中か。
「エーリッヒ、連中はバラ園の襲撃事件にも絡んでいるのだろう。この際徹底的に捜索するべきじゃないのか? そして連中を弾圧すべきだ」

「そうもいかないよ、アントン。同盟との捕虜交換が迫っているからね」
「どういうことだ」
「自由惑星同盟は信教の自由を認めている。今此処で地球教を弾圧すれば、それをきっかけに反帝国感情が高まるだろう。今回の事件、あくまで主犯はキュンメル男爵だ、地球教徒が唆したと言っても誰も信じない」

俺の言葉にフェルナーは顔を顰めた。
「先日フェザーン方面で帝国と同盟の間で小競り合いがあっただろう、今回の件はあれと連動している」
「まさか……」

絵図を描いたのは誰か? 間違いなく地球教だ、ルビンスキーが絡んでいるかどうかは分からない。彼なら帝国に宇宙を統一させてその中枢を支配する事で実権を握る事を考えそうだがなんとも言えない。奴と帝国との関係は最悪だ。同盟と帝国の共倒れを狙ってもおかしくは無い。

連中の考えは大体想像はつく。今の帝国の国内情勢は戦争が出来る状態ではない。戦争には経済力の裏付けが必要だが、その経済力が門閥貴族が滅んだ事で弱っている。軍の力で何とか凌いでいるが、回復するにはもう少し時間がかかる。

だから連中はフェザーン方面で紛争を起した。同盟の指揮官を唆したか、或いはサイオキシン麻薬でも使って操ったか……。そして同時に俺の暗殺を考えた。俺が死ねば
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