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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十二話 帰投
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艦娘たちが口々に叫ぶ中紀伊は深海棲艦から目を離せずに血の気を失った顔を呆然とさせていた。腕の中には先ほどまで元気一杯だった・・・・清霜が目を閉じて動かないでいる。
「何をしているの?あれでは敵に撃ってくださいと言っているようなものよ。」
遠くこれを見ていた加賀が珍しく色を成した。
「加賀さん、零戦を向かわせましょう。敵艦にけん制機銃掃射。そのすきに紀伊さんたちを収容しなくては。」
「そうね。・・・いいえ、駄目、間に合わない。」
加賀の視線の先にはまさに満身創痍のまま紀伊たちに残った砲を向ける深海棲艦の姿があった。
「紀伊・・・さん・・・・。」
はっと紀伊は腕の中を見た。清霜が意識を失いながら紀伊の名を呼んでいる。そう思った直後、強烈な力で清霜が腕の中から抱き取られた。
「姉様っ!!」
讃岐の顔が見える。清霜を抱き取り、抱えているその姿は紀伊以上にボロボロだった。
「お願いです、35,6センチ砲では駄目なんです!!」
「・・・・・・・・。」
「とどめを刺して!!!」
呆然とする紀伊を讃岐が強い力で反転させた。
それをどうこう思う間もなく紀伊の身体は深海棲艦の方に向く。残った最後の主砲が旋回し、仰角を敵に合わせた。
 紀伊の左手がまるで生き物のように勝手に振られた。

主砲弾を放つのと、残った砲身が耐用限界を超えて自爆するのとが同時だった。主砲弾は敵戦艦正面に吸い寄せられる。

 海上に炎と爆炎が立ち上り、深海棲艦の残骸が飛び散った。

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