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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十九話 内乱終結後(その3)
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いだろうな」
「そうか」

「彼の屋敷からはトラウンシュタイン産のバッファローの毛皮が何枚か出てきた。記録を調べたが彼に下賜された事実はない。彼はどうして所持しているのか答えられなかったよ」
そう言うとキスリングは可笑しそうに笑った。

「フレーゲル内務尚書はフェザーンとは繋がっていなかったのかな」
「直接は繋がっていなかったようだ。いずれカルテナー子爵が邪魔になった時はその件で彼を葬るつもりだったと言っていた」
やれやれだな、お互いに利用するだけで欠片も信頼はない。思わず溜息が出た。

「そう溜息を吐くな、エーリッヒ。卿を殺そうとした医師の事だがな、あの男はルビンスキーが用意したそうだ。カルテナー子爵がそう言っている」
「……」
なるほど、念には念をか。あの男らしいやり方だ。俺が助かったのは僥倖と言って良い。

「但し、あの男は帝国人だ、フェザーンとは何の関係もない。今此処にルビンスキーがいて彼を問い詰めても……、白を切るだろうな」
「……簡単に尻尾は掴ませないか、黒狐はしぶといな」

キスリングは俺の言葉に頷いていたが、ふと思い出したような表情をした。
「妙な男なんだ。地球こそ人類の母星、地球に対する恩義と負債を人類は忘れてはいけないとか言っている。地球教の信者らしい」
「……地球教か……」

なるほどな、フェザーンから人を出せば当然疑われる。ルビンスキーは地球教から人を出させたか。無関係な人間、そう思わせたかったのだろう。だがこれで地球教を調べられるしリヒテンラーデ侯にも連中がフェザーンの裏の顔だと説明できる。

「エーリッヒ、地球教だが監視するか?」
「……いや、それはしないでくれ」
俺の言葉にキスリングは不審そうな表情をした。鋭いな、キスリング。だが憲兵隊は駄目だ。憲兵が動けば連中は用心して動きを止めるか地下に潜りかねない。地球教は他の連中に調べさせよう。適任者が居る、そろそろ奴にも働いてもらおうか。


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