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星がこぼれる音を聞いたから
9. パンプキンパイと深煎りコーヒー
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 翌日、店主との約束を足すため、俺は隼鷹と一緒にトノサマ洋装店を訪れた。俺の隣には今、怪我が完治して上機嫌な隼鷹がいる。

「でもさー。なんであたしが一緒にいく必要があるの?」
「う……ち、ちょっとした理由が……」
「ふーん……まーいいけど」

 上機嫌は上機嫌だけど頭にはてなマークが浮かんでいるのは確実だが……でも言えん……約束の内容なぞ……

 トノサマ洋装店に到着し、ドアを開いた。途端に時が止まったかのような静寂に包まれる俺達。

「すみませーん」

 無粋にならない程度の大きさの声を上げ、店主を呼ぶ。

「……ぉお」
「約束を果たしに来ました」
「待ってたよ」

 お店の奥から、頭に三角巾を巻いてエプロンを身にまとった店主が出てきた。いつもと違うやや分厚いメガネをつけていたが、何か作業中だったのかな?

「取り込み中でしたか?」
「いや構わん。どうせ暇つぶしの道楽だ」

 そう言いながら、店主はメガネと三角巾を外し、穏やかな笑顔で俺達の前に来た。

「ソファに座りなさい。今日はコーヒーでも出そう」

 店主のその言葉に素直に従い、俺と隼鷹はソファに腰掛ける。店の奥に消えていった店主は十数分後、熱いコーヒーとパンプキンパイを3つ持ってきてくれた。

「さぁ味を見てくれ。さっき焼いた自信作だ」
「あれ? てことはこれ……」
「コーヒーは私が豆から焙煎した。パンプキンパイは私が作った」
「へぇ〜……」

 店主ご自慢のパンプキンパイとコーヒーをいただく。パンプキンパイはパイの部分がさくさくして香ばしく、かぼちゃのフィリングがとてもなめらかで美味しい。コーヒーはパンプキンパイに合わせたのか、深煎りのもので香りが強くてコクがある。

「どうかな?」
「ん……美味しいですよ?」
「素直に言いなさい。でなくては私の研鑽にならない」

 実を言うと、ちょっと俺にはこのコーヒーは合わない気が……いや美味しいんだけど、このコーヒー以上に俺好みのコーヒーを淹れてくれる存在が、俺の隣にいる……

「……美味しいんですが……深煎りタイプのコーヒーは、俺はあまり好きではないのかも知れません」
「ふむ……きみはどうだ?」
「んー……あたしが酒飲みってのもあるかもしれないけど、パンプキンパイはちょっと……」
「なるほど」

 隼鷹は隼鷹で、パンプキンパイの方に納得がいかなかったようだ。そんな俺達の辛辣な返答を受けた店主は、別段悔しがるわけでもへそを曲げるでもなく、むしろ……

「ニヤニヤ」

 上品な老紳士たる店主にあるまじき嫌らしいニヤニヤ顔を俺たちに向けていた。

「ん? どうしました?」
「いや、なんとなく私のコーヒーとケーキが気に入らない理由が分かってね」

 ホ
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