暁 〜小説投稿サイト〜
星がこぼれる音を聞いたから
2. ホワイトタイ
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 夕食の準備を終えた俺は割烹着を脱ぎ、三角巾を頭から外して執務室に急ぎ戻った。

 今晩は、ここ数日俺の頭を散々に悩ませた元凶……晩餐会という任務がある。夕食の準備を早めに済ませ、これから俺は晩餐会の準備を行わなくてはならない。なんせ準備にどれだけ時間がかかるか分からないし……

「提督、晩ご飯の準備終わったー?」

 執務室に戻った俺を待っていたのは、今日も秘書艦をやってくれている隼鷹だ。隼鷹のノリはいつもと変わらないが、いつもの隼鷹と違う点が一点だけある。

「お前こそ書類整理は終わったか?」
「うん」

 その言葉を裏付けるように、隼鷹の目の前には束になった書類の山が綺麗に整頓されて置かれていた。一番上の書類に目を通す。キチンと判も押され、書式に則ったいっぱしの書類として仕上がっていた。これなら問題はないだろう。

 隼鷹の目の前の机の上には、書類の山と筆記用具しかない。……つまり今日、隼鷹は珍しくシラフだった。毎日朝から日本酒を片手に茶色いため息をつきながら事務作業を行う隼鷹にあるまじき健全さだ。俺は隼鷹のことをキッチンドランカーならぬデスクドランカーに近い症状だと思っていたから、午前中は相当驚いた。

「ところでさ提督」
「ん?」
「服は? ちゃんとあるの?」

 ちゃんとあるもクソも、おれはこの海軍規定の純白の制服でいいだろう……と俺が口走った途端、隼鷹は

「ぶわぁぁあああぁぁぁぁぁ……」

 と若い女性にあるまじき茶色いため息をついていた。隼鷹の呼気に薄汚い茶色の着色がされているように見えたのは、きっと俺だけではないだろう。

「……なんだよ」
「提督さぁー……晩餐会だよ?」
「晩餐会だな」
「……招待状ある?」

 そんなもんどうするんだよ……と言いかけたが、隼鷹の妙なスゴミに気圧されて、俺は素直に机の引き出しの中にしまっていた招待状をそそくさと隼鷹に渡した。眉間にシワが寄った隼鷹なんてはじめて見たぞ……。

 難しい顔で招待状を眺める隼鷹。そんな隼鷹が物珍しくてじっと眺めていたら、その難しい顔はどんどんエスカレートしていった。『隼鷹ってこんな難しい顔するんだなー』と俺はのんびりと構えていたら、隼鷹は鬼のような形相になって俺に招待状の一部分を指差して見せた。

「ほら提督! ちゃんとドレスコードあるじゃん!!」
「……ドレスコードってなんだっけ?」

 俺の質問って、そんなに間抜けだったかなぁ……ドレスコードって何だっけ? 困った。隼鷹の頭にモジャモジャ線が出来上がっていく……

「服装の指定!! 晩餐会って服装の指定があるの!!」
「そ、そうなの?」
「ほらココ! “ホワイトタイでお越しください”って書いてあるじゃんか!!」

 普段の隼鷹からは想像がつ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ