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俺の四畳半が最近安らげない件
イチゴのフェアリー・テイル
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え?なんで年中お弁当にイチゴ入ってるのかって?
ウチねー、イチゴの妖精がいるんですよー
ほんとだよ?うそじゃないもん!
え?これから?…いいよ!会わせてあげる!



―――ちょろいな。



二つ後輩の不思議ちゃん、穂香の後ろを歩きながら、俺は少しニヤニヤしていたかもしれない。
やったぞ、穂香のアパートに入り込む口実を得た!
たまに妙な事を云うがまぁ…料理出来るみたいだし可愛いし、妖精程度の不思議発言なら付き合おう。
どうせとちおとめのゆるキャラ人形とか振りながら
「ホラ、うちの子♪」とかそんなのに付き合わされる程度だろう。少しめんどくさいが、彼女としては申し分ない。
妖精でもゆうこりん星でもどんと来い。長かった独り者生活に、今度こそピリオドを!!


―――と、俺はそう思っていた。


「――先輩、ここからは静かに。イチゴの妖精は、騒がれるのがお嫌いです」
ドアノブに手を掛け、穂香は声のトーンを落として呟いた。…なんか意外と本格的な『ごっこ遊び』が始まる予感。参ったな、こいつ思った以上にめんどくさい女かも知れないぞ。
「あの方です。…見えますか」



………柴犬感のある小さい爺さんが、険しい顔をして座っていた。



「いっ!?」
「静かに」
穂香は俺を低い声でたしなめ、そっと床に指をついた。
「騒がなければ干渉もされませんよ」
「な、なにこれ」
「イチゴの妖精」
「爺さんだよ!?」
「当たり前でしょう?」
「いや、だってイチゴの妖精ったら…普通…」
こう、可愛くて女の子で、先っぽにイチゴついたステッキとか振って『イチゴ食べてみんな幸せになれ〜☆』とか言って飛び回るそんなファンシーな生き物だろ!?
「先輩〜。人間とタッグを組み、主要農産物として第一次産業を支える、人にとっても自然界にとっても重鎮的存在なんですよ〜?それをイチゴのステッキ持って飛び回るとか〜!!」
…完全に『困った部外者』を見るような視線だ。なにこれ、俺が悪いの?
「…すみません…」
「イチゴが栽培されるようになってから何年経っているか…知ってるんですか〜?」
「す、すみません、知りません」
「私も知らないです〜」
「今責められたの何でだ!」


かつん、かつんと爺さんの杖が鳴った。


「……うるさかったみたいです。ここからは小声で」
「……なんでそんなにツーカーなんだよ」
イチゴの妖精を見せろと云ってしまった手前、一応まじまじと観察してみる。
爺さんは小さい。最初は遠くにいるから小さく見えるのかと思ったが、座っているとはいえ俺の膝丈くらいのサイズだ。伸ばした白髪をきっちりと後ろでまとめ、常に前方を睨みつけて険しい顔をしている。…何というか。
「…機嫌、悪いのか?
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