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テキはトモダチ
15. あいつらの目的 〜赤城〜
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「……」
「生きる意味なんて元々ない。だから生きる意味は自分で見つけて、自分で意味のある生にしなきゃいかんのよ」
「……」
「そして死にも意味はない。だから残された俺達が、その死に意味を見出さなきゃならん」

 提督は、そう言いながら机の上の資料に目を落とした。つられて私も視線を書類へと向ける。書類には、轟沈した艦娘263人の最期が記されている。

「提督」
「ん?」
「彼女たちの死に意味はあるとお考えですか?」
「あると思うよ」
「聞かせてもらえますか?」
「……笑わないでよ?」
「笑いませんよ」
「……彼女たちの死は、俺達に深海棲艦側の戦闘拒否の意思の可能性を教えてくれている。それも、560万もの同胞の犠牲を出してなお頑なに守り続ける、強固な決意のようだ」
「はい」
「となると、ある一つの可能性が見えてくる」
「その可能性って……?」

 私は次のセリフを言った時の提督の顔を忘れることはないだろう。あんなに真剣で、力の宿った真っ直ぐな眼差しをした提督を、私は今まで見たことがなかった。

「停戦からの共存」
「え……」
「電と集積地のように深海棲艦と手を取り合って進む未来の可能性を、この子たちは教えてくれているんじゃないかと俺は思ってる」
「……本気ですか」
「俺達の出方次第によっては、夢物語ではないと俺は思うけどね」

 少し前の私なら『そんなことは出来るわけがない』と一笑に付したことだろう。263人の同胞を轟沈に追い込んだ者達と手を取り合い生きていくなぞ、誰が納得するかと提督の考えを否定したことだろう。

 でも今は違う。

――集積地さーん! ありがとうなのですー!!!

――ありがとうイナズマ! 元気でなー!! イナズマー!!!

 あの、別れ際の電さんと集積地さんを間近で見た今の私は、不覚にも提督のこのセリフに期待感を持ってしまった。そして。

――フフ……コワイカ?

 私の相棒にして天龍二世の子鬼さんと、ひょっとすると殺し合いをせずに済む未来があるのではないか……そう考えると、フと安心して微笑んでしまうほどの……気を抜くと涙が流れてしまいそうになるほどの大きな安堵が、私の胸に押し寄せた。

「……」
「……」
「……ぷっ」
「笑いなさんなよ……自分でも大それたことだなぁって思ってるけどさ……」
「……いえ、提督がそのようなことを考えてただなんて夢にも思ってなかったものですから……」

 しかし、そこに至る道のりは決して平坦ではないことは、私にも分かる。

 そして意外にも、その障壁は意外と早く私たちの前に現れた。それは、一人の招かれざる客が……歓迎出来ない新たな仲間が、この鎮守府に合流したときに姿を見せた。

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