暁 〜小説投稿サイト〜
神剣の刀鍛冶
EPISODE06勇者X
[2/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
越したことはない。今回の悪魔襲撃も、あくまで可能性の話なのだから、必ず起こるわけではない……そう思いたい。

そして二人の上司の視線が凱に向けられる。

「「ガイ」君」

「わかっています。見つけ次第、俺が黒衣の男を!!」

それからして、3人は詳細な打ち合わせを行い、その会議は深夜にまで及んだ。





【???】





暗い、暗いふきだまり。ひどく暗い夜の街に、一人の浮浪者が死にかけていた。
顔はひどく痩せこけ、骨の形がよくわかるほどに角ばっていた。
左手、薬指、中指、小指は、綺麗にえぐられたようにかけている。

「なぜオレは……救われない……」

聞こえるのは、夜間でありながらにぎやかな街の声。様々な人が行きかう酒盛りの宴。彼にとっては別世界の出来事のように感じていた。
しかし、浮浪者の空間は停止したままだ。ただ静寂な時のみが動くことを許される異質な空間。まるで彼だけを隔離空間に閉じ込めたかのようだった。

「失礼」

矢先だった――

死神は突然と浮浪者の前に現れた――

浮浪者の左手を手に取り、まじまじと観察する。その様子は、まるで品定めをするかのように――

「やっぱり、こういうのは経験者(エキスパート)だよなぁ……初心者(バージン)はだめだめだった。勝手にやって勝手に仕掛けて勝手にやられやがった。ダカラ今度はお前に夜露死苦(ヨロシク)する」

浮浪者を鑑定し終えて、即決した。そして黒衣の男は指先に何かをつまみ、浮浪者の口に無理やり放り込む。

「呑め」

耳元でささやく――

「呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。」

呪詛のように囁きが繰り返される。

「呑めよぉ」

その時、黒衣の素顔が月の光に照らされていた。

忌々しい程に瞳に光を宿らせ、最高に晴れやかな笑顔。全く忌々しい。

そして浮浪者は確信した。この世界に初めから神はいない……悪魔ならいるということを。

「……ぁ」

限界だった。喉は砂漠の大地よりも乾き、腹は海よりも深く空腹していた。

いつの間にか、黒衣の人物は消えていた。

このまま、じっとしたまま、何もしないまま、ただ死を待つばかりだった。

かろうじて生きてはいたが、やがて訪れる生命の朽ちる瞬間が、とてもとても怖かった。

違う。浮浪者が本当に怖いのは、死ぬことじゃない。

――最期まで一人でいることだった――

先ほどの黒衣の人物もいなければ、死神さえも迎えに来ない。
文字通り、全てに見放されたのだろうか。

「……うぁ?」

いつしか、頭上に誰かが立っていた。現れた影に、浮浪者の瞳は移ろうように漂
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ