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テキはトモダチ
13. 友達が帰る日(前) 〜電〜
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地さんも、きっと帰る時が来たのです」
「……」

 集積地さんは、何も言わず私を見つめていた。最近はずっと眼鏡越しだったから忘れていた。集積地さんの瞳は、澄んだブルーの美しい瞳だった。

「……いつ帰るのです?」

 昨日までの私ならあまり質問したくない一言が、するっと口から出た。昨日までの私は、集積地さんの気持ちを受け入れたくなかった。だから私はこのことを聞きたくなかった。

 でも今は違う。限られた時間を、集積地さんと精一杯楽しく過ごしたいから。最後は笑顔で集積地さんを見送りたいから。

「今日の朝10時にはここを出る」
「ずいぶん急なのです」
「遅れるとちょっと問題があるらしくてな。ならば帰ることが出来る今のうちにって話になった。アカギとテンリュウが私の故郷に近い海域まで送ってくれるらしい」
「そうなのです?」
「ああ。道中の護衛に二人が志願してくれた」

 朝10時……残された時間はもう残り少ない……少しだけ胸が痛む。困った。もう泣かないはずだったのに、目に涙が溜まってきた。

 そんな私を見かねてなのか……集積地さんが布団の中の私の左手を取って、ギュッと強く握ってくれた。

「見送りだが、お前も一緒に来てくれ。提督から許可はもらってある」
「電も? いいのです?」
「お前にも見送って欲しいんだ。……お前と、少しでも一緒にいたいんだ」

 そういう集積地さんの目は、澄んだブルーの瞳からじわりと涙を滲ませていた。

 そっか。集積地さんと離れるのが悲しいのは、私だけじゃなかったんだ。集積地さんも悲しいんだ。よかった……。

「分かったのです! 電も集積地さんを護衛するのです!」
「ホントか? 本当に私を送ってくれるか?」
「はいなのです!」
「ありがとう! ありがとうイナズマ!」

 集積地さんは私の返事を聞いて、涙目だけどくしゃくしゃな笑顔になって、私にお礼を言ってくれた。私の手を握りしめ、鼻声になって喜んでくれた。

 よかった。集積地さんが喜んでくれるなら、私も同行しよう。私だって、集積地さんと少しでも一緒にいたいし。……でも。

「本音をいえば……ちょっとだけ不満があるのです……」
「? ど、どうした?」
「最後にもうちょっと……長く一緒にいたかったのです」
「……私もだ」
「集積地さん……」
「イナズマと夜通しゲームして、いなずま社長にボンビーをなすりつけまくりたかったな」
「集積地さんっ!!」
「ハハっ……」

 二人でお互いの手を取って喜んでいたら、『ぐぅ〜……』とお腹が鳴った。それも二人同時にだ。

「ぷっ……腹が減ったのか?」
「集積地さんだって……ぷぷっ……」
「しまらないな」
「しまらないのです」

 もっと2人でお布団の中
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