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天本博士の怪奇な生活
26部分:第二十五話

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第二十五話

               第二十五話  攻撃目標、事務所!
 博士が向かったのは何と。地獄だった。
「・・・・・・あの、博士」
 小田切君がまた問う。
「本当にここでするんですか?」
「何を恐がっているのじゃ」
「だってここは」
 暴力団事務所前である。ベンツが停まり柄の悪い男達が出入りしている。
「ゲッ、天本博士だ」
「何しに来たんだ」
 ヤクザ者達の方が嫌がっている。博士の人望はまことに素晴らしい。
「失礼な奴等じゃ」
「まあそうでしょうね」
「わしはヤクザ者以下か」
「さて、どうでしょうね」
 その質問にはあえて答えはしない。
「で、実験対象は?」
「事務所じゃ」
「ヤーさんの事務所消し飛ばすんですか」
「何、ちょっと協力してもらうだけじゃ」
「許可は?」
「許可!?何じゃそれは」
 素で言ってきた。
「誰の許可を得るのじゃ」
「って協力してもらうんですよね」
「事後承諾でな」
「博士・・・・・・」
「何、ヤーさんなら消えても誰も文句は言わぬわ」
 幾ら何でもあんまりな暴論である。なお博士はこの論理で凶悪犯の刑務所で毒ガス実験をしたこともある。人権とは無縁の思考回路を持っているのである。
「では行くぞ」
「おい、何か出してきたぞ」
「まずいんじゃないか」
「あの、ヤクザ屋さん達逃げていきますよ」
「わしを撃たんのか」
「撃ったらどうするんですか?」
「天才に銃を発砲するとは不埒千万」
 またしても身勝手な暴論である。
「皆殺しにしてやるわ。サリンをも遥かに凌駕する速効性の猛毒のガスでな」
「やっぱり」
「それをブラックホールでの実験で留めてやるのじゃ。寛大じゃろ」
「左様ですか」
「では見ておれ」
 博士は銃を構えた。
「わしのあらたな発明品の素晴らしさをな」
「やれやれ」
「逃げろ!金目のものは!?」
「全部持った!」
「ブツの証拠は!?」
「どうせあの博士だ!消し飛ばすに決まってる!置いてけ!」
「いいか、命さえあればいいからな!」
「あの博士にだけは構うな!いいな!」
 言っている側からヤクザ屋さん達が全速力で逃げていく。その筋の人よりも遥かに危険極まる博士であった。


第二十五話   完


               2006・10・10


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