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仮面ライダーAP
第三章 エリュシオンの織姫
最終話 紡がれた未来へ
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しかし。遥花の視界に、目を光らせてこちらを覗き見る女子中学生達が入り込んだ瞬間。ナースの表情は凍り付き、好転していたムードは一気に瓦解してしまう。

「ふっふーん。見ちゃった見ちゃった聞いちゃったー。これは村のみんなに報告しないと!」
「えっ!? 島風ちゃんに吹雪ちゃん!?」
「ご、ごめんなさい遥花さん。立ち聞きする気はなかったんですけど」
「みんなー! 遥花さんが南雲先生とランデブーしたいってー!」
「ちょ、ちょちょちょ! 待ちなさい、こらぁああぁあぁ!」

 島風と呼ばれる少女は一目散に村の中を駆け抜けながら、有る事無い事を吹聴して回り出した。吹雪という片割れの少女は必死にペコペコと頭を下げるが、そうしている間も島風の言い触らしは進行している。
 遥花は顔を茹で蛸のように赤らめながら、怒号を上げて島風を追いかけて行くのだった。豊満に飛び出した胸を、激しく上下に揺らしながら。

「……ふふ」

 そんな彼女達を、遠巻きに見守りながら。サダトは月明りを映す海原から――夜空の彼方へと視線を向け、微笑を浮かべる。この星から遠く離れた、銀河の果てへと。

(……アウラ。俺達がしてきたことは、もしかしたら「過ち」だったのかも知れない。でも、その「過ち」の中で見つけた幸せは、ただの間違いなんかじゃない)

 その先にある異星――エリュシオン星の玉座に座する、若き女王も。その君主の座から、この蒼い星を見守っていた。
 彼と同じ、穏やかな微笑を浮かべて。

(だから俺は、今でも。君に会えてよかったと思ってる。それはこの先もずっと変わらない。君の願いは確かに、この星に届いたんだから)

 星を隔て、永遠に別れた織姫と彦星。年に一度も会えない彼らだが――互いが残した絆の深さは、絶えずその想いを繋ぎ続けている。彦星が「剣」を捨て、その手に「メス」を取った、今も。
 織姫がこの星に残してしまった「罪」を彼女に代わり清算するべく、その道へ踏み入った、今も。

 それはさながら、脈々と鼓動する「命」のように。

 この島に咲き誇る「花」も。夜空を滑るように舞う「鳥」も。頬を撫でる夜の「風」も。煌々と光を放つ「月」も。――その全てに宿る「儚き命」も、彼らの絆を見守っていた。

「南雲先生っ! ぼさっとしてないで先生も島風ちゃんを捕まえてくださいっ!」
「え、僕も?」
「さっさと走るっ!」
「は、はいはい。おーい島風ちゃーん!」
「ふっふーん! ここまでおいでー!」
「もぉー! 待ってったら島風ちゃあぁーん!」

 そして今日も、南雲サダトは。守り抜いた人々と共に、穏やかなひと時を謳歌するのだ。

 仮面ライダーがいないのは、世界が平和である証なのだから。

 ◆

 ――2022年4月4日。
 東京都
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