第三章 エリュシオンの織姫
第2話 仮面ライダーの死
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、数体の量産型フィロキセラ怪人。その猛威に為す術を持たない市民は蹂躙され、鎮圧に挑む警官隊も容赦無く餌食になっていた。
彼らの肉体から伸びる触手は強靭な鞭となり、人々の体を容易く切り裂いて行く。肉の刃は命乞いも聞かず、淡々と弱者を屠り続けていた。
――だが、人々を脅かしている災厄は怪人達だけではない。むしろ、彼らは「おまけ」のようなものだった。
白と赤を基調とする塗装。アスファルトに跡を残し、ガードレールもパトカーも人も踏み潰していくキャタピラ。
一度火を吹く度に、何十軒というビルを灰燼に変えていく主砲。
外見こそ、ナチス・ドイツ陸軍の重戦車――「ティーガーI」だが。その骨董品同然のフォルムの下に、破壊と殺戮に傾倒した最新技術が投入されていることは誰の目にも明らかだった。
その周りをうろつきながら、手当たり次第に市民も警官も惨殺しているフィロキセラ怪人達は、重戦車の随伴歩兵に過ぎない。
市民、警官問わず何もかも踏み潰し、破壊しながら渡被験者保護施設を目指して前進しているこの重戦車こそが、この戦場の主役となっていた。
「やはり施設を目指してるのか!? 収容者の避難は!」
「まだです! 中はパニック状態で……!」
阿鼻叫喚の生き地獄と化した目黒区。その戦火の渦中で、警官隊はせめて一人でも多くの市民を避難させるべく奮闘していた。
そんな彼らの勇気も、献身も。重戦車のキャタピラは、虫ケラのように踏み荒らしていく。その惨劇を身近に感じている渡被験者保護施設の人々も、騒然となっていた。
すでに重戦車は、施設の門前まで迫っている。
――その時。
「……!? おい、あれ!」
幸運の重なりから、未だに生き延びている警官の一人が声を上げる。
彼が指差した先には――こちらに向かい、爆走している風変わりな一台の車。
現代においては時代錯誤としか言いようのないフォルム。旧日本軍の九五式小型乗用車と見紛う赤い車体は、その形状に見合わない速さで廃墟に囲まれたアスファルトを駆け抜けている。
「……ッ!」
その奇妙なマシン――「アメノカガミノフネ」を駆る、一人の青年。
彼が羽織っている漆黒のライダースジャケット。その襟部に付いているファーが、向かい風に靡いていた。
赤いグローブを嵌めた手に力が篭り、黒のブーツに覆われた足が強くアクセルを踏み込んでいく。
彼は片手でハンドルを操作しつつ、懐から一本のワインボトルを引き抜いた。矢継ぎ早にそれを、ワインオープナーを模ったベルトに装填していく。
『SHERRY!? COCKTAIL! LIQUEUR! A! P! SHERRY!? COCKTAIL! LIQUEUR! A! P!』
「――変身ッ!」
ベルトか
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