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第三十七話

                第三十七話  雅美の戦い
「まだね」
 雅美はまだ作曲で悩んでいた。
「これじゃまだ」
「御主人様」
 そんな彼女を心配して使い魔達が声をかけてきた。
「あまり根を詰められても」
「そうです。たまには気分転換なぞを」
「気分転換!?」
 雅美はビーナの言葉に顔を向けてきた。
「そうです。如何でしょうか」
「ビーナの言う通りです。悪くはないかと」
「そうね」
 その言葉に考える顔を見せてきた。
「そうしたらかえってヒントが湧くかも」
「そうです」
「ですからここは」
「わかったわ」
 雅美もそれを受けた。そして二匹を連れて映画館に向かうのであった。
「ねえ」
 雅美は道を行きながら二匹に声をかけてきた。
「わかってると思うけれど映画館じゃ」
「ええ」
「無論」
 二匹はすぐにそれに答えてきた。絶対の自信のある返事であった。
「姿は消しますので」
「御安心下さい」
「頼むわね・・・・・・あっ」
 ここで彼女はふと気付いた。
「そう、これよ」
「!?」
「どうされたのですか御主人様」
「姿を消すのよね」
 彼女はここであることを思いついたのであった。
「実はね」
「はい」
「それなのよ」
 彼女は何かを感じているのは間違いない。だがそれが何であるのかまでは二匹にもわかりはしなかった。彼等とて主の全てをわかるわけではないのである。
「それよ。実はね」
「ええ」
 二匹は主の話を聞く。
「曲はいけたのよ」
「そうだったのですか」
「けれどね」
 それでも彼女はまだ足りないと感じていたのだ。そしてそれがわかったのだ。
「これでね。いけるわ」
「御主人様」
「ではそれを掴まれたのですね」
「そうよ。やっとね」
 にこりとして笑う。屈託のない明るい笑みであった。


第三十七話   完


                  2006・12・13



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