暁 〜小説投稿サイト〜
テキはトモダチ
3.捕虜じゃないよ 〜電〜
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してなかったのです……」
「ほーん……」

 下手っぴな私のウソを信じたのか通じなかったのかは分からないが、司令官さんはこれ以上私を追求はしなかった。司令官さんは私の隣に来て集積地棲姫の顔を覗き込むと、私と同じくそのほっぺたに興味を持ったのか、彼女の顔をじーっと見つめた後……

「人間と変わらんな。なんかつっつきたくなる……」

 とぼそっと口ずさんでいだ。

「司令官さんもつっつきたくなるのです?」
「うん。なんかこう……つっつきたくなるな」

 よかった……集積地棲姫のほっぺたをつっつきたくなるのは私だけではなかったようだ。

「ニヤニヤ」
「? 司令官さん?」
「いや別に……ニヤニヤ」

 意地悪そうな表情がちょっと気になるけれど。

「お客さんはまだ目覚めんか」
「はいなのです。司令官さんは?」
「いや、電がいるって言うからちょっと様子を見にきた。お客さんて言っても相手は敵だし。こっちに攻撃意思がなくても……ねぇ」
「……」

 司令官さんと二人で集積地棲姫の寝顔を眺める。いくら怪我をしているとはいえ、相手は現在の私たちの敵、深海棲艦の集積地棲姫だ。目覚めた瞬間パニックになって大暴れする可能性もあるし、最悪、未だにつけっぱなしの艤装で鎮守府に壊滅的なダメージを与える可能性もある。

 先の戦闘で、私たちが集積地棲姫への効果的な攻撃手段を持たないことは明白だ。もし彼女が本気で暴れてしまえば、それこそ手がつけられなくなる。私はここにきて、自分がしでかしたことの重大さを少しずつ実感しはじめていた。

「……司令官さん」
「ん?」
「ごめんなさいなのです……」

 つい謝罪が口をついて出る。あの時は彼女をひとりぼっちにしておけなくて……あのままほおっておけなくて夢中で連れてきたけれど、私はとんでもないことをしでかしてしまったのではないだろうか。司令部から処分されるかもしれない。この鎮守府に迷惑をかけてしまうのかもしれない……。

 そんな私の心配をよそに、司令官さんはいつもの死んだ魚のような目のまま私の頭をくしゃくしゃっとなでてくれた。

「何言っちゃってんのよ」
「……」
「まぁ確かにとんでもないことをしでかしてくれたけどね。こいつを連れてきたこと自体を怒るつもりはないし、処分もないから安心しなさいよ」
「はいなのです」
「それにまぁ、悪いことにはならんでしょ。多分」
「んん……」

 不意に集積地棲姫の眉間にシワが寄り、身体がもぞもぞと動き始めた。私たちの会話の声が大きすぎたのかも知れない。起こしてしまったようだ。

「お目覚めかな?」
「そうみたいなのです」

 頭に巻いた包帯で片方が隠れた目をうっすらと開き、集積地棲姫が目を覚ました。大暴れするかもしれな
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