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第十八話

                第十八話  ライブの最初で
「ねえ」
 梨花がライブをはじめる前に楽器組のメンバーに声をかけてきた。
「何?」
「ちょっと考えてるんだけれどね」
「ええ」
「二人が出るまでに頑張ってみない?」
「頑張るって?」
 赤音がそれに問う。
「私達の演奏も聞かせてあげたらどうかって思うのよ」
 ギターを手にこう語る。
「どうかしら」
「悪くないわね」
 それに最初に賛成したのは美樹であった。
「ヴォーカルだけがバンドじゃないからね」
「そういうこと」
 美樹の言葉に不敵に笑う。ちょっと大人びた笑みであった。
「じゃあやってみる?」
 赤音も言った。
「私達もいるんだって」
「けれど」
 だが春奈が弱気そうに言ってきた。
「大丈夫かな、私達だけでも」
「大丈夫よ」
 だが梨花はそんな春奈を宥めた。
「やれるわ。絶対に」
「そうかな」
「言い換えるとそう思わないと最初から駄目なのよ、こういうのは」
 梨花の言葉はかなり真理をついていた。
「バンドはね。自信がないと」
「そうね。そうじゃないと最初からやれたものじゃないわ」
 美樹もそれに同意した。
「そういうこと。だから春奈ちゃんも自信持って」
 赤音が絶好のタイミングで声をかけてきた。
「あれだけ練習したし」
「ううん」
「春奈ちゃんが一番練習してたわ」
 リーダーの梨花も声をかけた。
「それにそのキーボードは本当に凄いから」
「クラウンは二人だけじゃない、六人全員が凄いって見せてやりましょうよ」
「そういうこと。だからね」
「わかったわ」
 美樹と赤音に言われて春奈もようやく顔を上げた。
「じゃあ私も」
「よし」
 三人はそんな彼女を見て会心の笑みを浮かべ合った。
「行くわ」
「それなら四人でね」
「うん」
「行くわよ」
 四人がまず路上のステージに出る。そして楽器の演奏をはじめるのであった。


第十八話   完


                2006・10・9


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