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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十三話 権謀の人
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ていつかこんな事になるのではないかと思っていた……。

リュッケ中尉がローエングラム伯に連絡を入れている。“レンテンベルク要塞より緊急の連絡が入りました。司令長官の容態がよくないようです。至急艦橋に来てください”。

その隣でシュタインメッツ少将が同じ内容をオーベルシュタインに伝えている。午前四時、この時間帯に呼び起こすのだ、それなりの理由が要る。考え付くのは司令長官の健康問題ぐらいしかなかった。

ローエングラム伯達が来るまでの間、ミュラー提督と話をした。ミュラーは辛いだろう。彼は司令長官の親友だが、同時にローエングラム伯の事を信じてもいた。疑いつつも何処かで信じようとしていた……。

「こんな日が来るとは……」
「ミュラー提督、卿はローエングラム伯とは付き合いが長かったな」
「准将に昇進した時、分艦隊司令官として二百隻ほどの艦隊を率いましたが上官だったのがローエングラム伯、当時のミューゼル中将でした」

「あの時の誇らしさは忘れる事は無いでしょう。それなのに……」
溜息を吐くミュラーの気持は良く分かる。俺も准将になり艦隊を率いたときは嬉しかった。当然率いた艦隊に、所属した艦隊に思い入れは有る。

ナイトハルト・ミュラー、良い男だ、誠実で有能で信頼できる。司令長官の親友だがその事を周囲に自慢する事も無ければ、司令長官に対して甘える事も無い。あくまで誠実に一艦隊司令官として任務に励んでいる。

ローエングラム伯配下の分艦隊司令官達がやってきた。ブラウヒッチ、アルトリンゲン、カルナップ、グリューネマン、ザウケン、グローテヴォール、いずれも有能な男達だ。俺とミュラーを見て訝しげな表情をしている。

敢えて答えることをせず無視した。そしてローエングラム伯、オーベルシュタイン准将が艦橋に現れた。対照的な二人だ、華麗で鋭利なローエングラム伯と陰鬱さを漂わせたオーベルシュタイン。思わず身体が緊張した。

「ワーレン、ミュラーもいるのか」
「はっ、我々も此処へとの指示を受けましたので」
ローエングラム伯が訝しげな声をかけてきたが当たり障りの無い返答を返した。必ずしも納得したようではなかったがシュタインメッツ少将の声にそれ以上は問いかけて来なかった。

「閣下、レンテンベルク要塞から通信です」
スクリーンにヴァレンシュタイン司令長官が映った。艦橋にざわめきが起きる。具合がよくないと言われていた司令長官が出たのだ、驚いたのだろう。続けてルッツ、ロイエンタール、ミッターマイヤーの顔も映った。

「司令長官? 御身体がよろしくないと聞きましたが……」
ローエングラム伯が訝しげな声を出した。司令長官だけでなく、ルッツ提督達の顔が映った所為もあるだろう。

『ええ、余りよくありませんね。つい五時間程前に殺されかかりましたか
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