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一四七キロフォーク
第一章

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                 一四七キロフォーク
 柳本咲はこの時得意の絶頂にあった、それはクラスでも同じであった。
 クラスメイト達にだ、毎朝満面の笑みで言っていた。
「昨日もやってくれたわね」
「ああ、そうだな」
「そっちは昨日もよね」
「勝ったのよね」
「そうよね」
 伊藤春華、遠藤静華、中森凛、橋口七々瀬という彼女と長い付き合いの彼女達はその咲に憮然として返すばかりだった。
「ヤクルト負けたけれどな」
「昨日はね」
 まず春華と七々瀬が言う。
「ピッチャーまた打たれたよ」
「残念なことに」
「阪神惨敗よ」
「よりによって甲子園で巨人にね」
 静華と凛はこちらのチームだった。
「けれどソフトバンクはなのね」
「また勝ったのね」
「いやあ、去年以上にね」
 それこそとだ、咲だけはにこにことしていた。
「強いわね」
「それはわかったけれど」
 咲に今度は竹林未晴が言ってきた。
「それでもね」
「浮かれ過ぎ?」
「そうよ、まだ六月よ」
 一年のうちでというのだ。
「六月で優勝とか言うの?」
「ここまで強いと」
「幾ら何でも早過ぎでしょ」
「そう言ってもここまで強いと」
 ソフトバンク、このチームがというのだ。
「やっぱりそう思えてね」
「仕方ないっていうのね」
「八月上旬でマジック点灯して」
 咲は浮かれたままこうも言った。
「後はね」
「クライマックスっていうのね」
「まあね」
 否定せずに言う咲だった。
「そうなるかしらね」
「へっ、いいよなソフトバンクは」
「本当にね」
「物凄く強くて」
「ぶっちぎりで」
 春華達はまた言った。
「三連覇か、今年優勝したら」
「もう言うことなしね」
「こっちは連覇どころか優勝すらね」
「夢物語だってのに」
「あのね、横浜なんてね」
 北乃明日夢は口をへの字にさせて言った。
「去年は最下位だったのよ」
「いや、そう言われても」
 咲も困ることだった。
「返答出来ないけれど」
「こっちは最下位、そっちは優勝なんて」
「天国と地獄っていうのかしら」
「そうよ、こっちはクライマックスですらよ」
 それこそというのだ。
「出たことないのよ」
「そうだったの」
「二十一世紀で何度最下位になってると思ってるのよ」
 こうまで言う明日夢だった。
「今度優勝出来るの何時なのよ」
「咲にそう言われても」
「希望の光が見えて来ないわ」
「まあそれ位にしてね」
「そうよ、明日夢は昔から横浜のことになると止まらないから」
 明日夢の旧友である安橋恵美と高山茜が彼女のそれぞれ左右に来て止めに入った。
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