暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十七話 悪縁
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
帝国暦 487年 12月25日  オーディン 軍務省 軍務尚書室  エーレンベルク元帥



「例のアドルフ・エッカート、そしてボイムラー大佐と名乗った男ですが、その正体が分かりました」
「……何者かな、ラフト中佐」
二人の士官が神妙な表情で目の前に立っている。一人は憲兵隊のラフト中佐、もう一人は情報部のシュミードリン中佐。そして話を聞くのは私とシュタインホフ。

「彼の名前はカール・フォン・フロトー大佐です、軍務尚書閣下」
「……」
カール・フォン・フロトー大佐、スクリーンに彼の顔が表示された。鋭い目をした三十代後半の男。シュタインホフは厳しい目でスクリーンを見ている。

ヴァレンシュタインがレンテンベルク要塞を落とした。オフレッサーは戦死、討伐軍は順調に軍を進めている。こちらも上手く進めたいところではあるが、焦りは禁物だ……。

「それで?」
問いかけると今度はシュミードリン中佐が答えた。
「フロトー大佐は今年の七月から行方不明になっています。……それまではある貴族に仕えていました」

「ある貴族とは、もしやランズベルク伯か?」
「いえ、そうではありません。フロトー大佐が仕えていたのはカストロプ公です」
「カストロプ? オイゲン・フォン・カストロプ公爵か! あの男に仕えていたというのか?」

思わずシュタインホフの顔を見た。シュタインホフは苦い表情をしている。七月から行方不明? 七月と言えば……、シュミードリン中佐を見ると中佐は微かに頷いた。

「フロトー大佐が行方不明になったのは、カストロプ公が事故死してからです。マクシミリアンの反乱時には既にカストロプには居ませんでした」
「……」

フロトーはカストロプ公が事故死すると同時に行方をくらました……。
「その男、カストロプ公に仕えたのは長いのか?」
「士官学校を卒業して直ぐですから、十八年前になります」
「……」

今度はラフト中佐が話し始めた。
「カストロプ公は数々の疑獄事件に関与しました。司法省の捜査を免れるため非合法な手段で証拠を揉み消した事もしばしばあります。それ専用のチームを用意していたのです。フロトー大佐の役割はカストロプ公の命を受け、そのチームを率いて揉み消しを行う事でした。彼らは皆軍人だったようです」

「馬鹿な、カストロプ公は軍人を犯罪の後始末に使ったというのか!」
「落ち着かれよ、軍務尚書」
「しかし……」
「先ずは話を聞くのが先だ。ラフト中佐、続けてくれ」

ラフト中佐が私達を見ながら言い辛そうに話し始める。
「フロトー大佐は周囲にカストロプ公がヴァレンシュタイン司令長官に殺されたと言っていたそうです」

思わずシュタインホフの顔を見た。シュタインホフは首を振って溜息を吐きながら呟く。
「……愚
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ