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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十六話 勇者の中の勇者
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歩、もう一歩詰めればオフレッサーのトマホークの間合いに入る。詰めるべきか、それともオフレッサーが動くのを待つか……。一瞬の躊躇い、その瞬間にオフレッサーが動いた! 慌てて後ろへ飛び下がる、間に合うか!

吼える様な声とともにトマホークが目の前を通り過ぎる。やはり踏み込みが甘い、その分だけトマホークに疾さと伸びが無かった。そうでなければ俺の首は胴体と離れていただろう。

間合いを詰めた。オフレッサーの身体が流れ、返しのトマホークは来ない。がら空きになった脇に戦闘用ナイフを突き立てる。更に押し込もうとしたその瞬間に吼え声と共に凄まじい力で跳ね飛ばされた。

激しい衝撃に耐え慌てて立ち上がった。オフレッサーは座り込んでいる。その脇腹、おそらくは肋骨の間に戦闘用ナイフが突き刺さっているのが見えた、おそらくナイフは肺に届いたはずだ。これ以後は足だけではなく呼吸の辛さもオフレッサーを苛むだろう。俺の勝ちだ。

もう一本の戦闘用ナイフを抜き、ゆっくりと近づく。オフレッサーがヘルメットを外し投げ捨てた。口から血が出ている。俺を見てにやりと笑った。

「見事だ、リューネブルク……。どうやら俺の負けのようだな」
「……」
「足を狙うか、考えたものだ。一騎打ちでしか使えぬ手だな」
オフレッサーが咳き込んだ。口から血が溢れる……。

「……降伏していただきたい」
「馬鹿を言え、卿が俺の立場なら降伏するか? 敗者を侮辱するな、勇者として扱え」
「……」
断るのは分かっていた……、それでも言わざるを得なかった……。

「卿とは闘えぬのかと思った。だが大神オーディンは俺を哀れんでくれた。卿が来てくれた時、一騎打ちを望んだ時、俺は嬉しかった。感謝するぞ、リューネブルク。良く此処へ来てくれた」
「……」

「装甲擲弾兵の事、頼むぞ。卿こそ、勇者のなかの勇者だ」
「……承知」
オフレッサーが突き刺さっている戦闘用ナイフを呻き声と共に引き抜いた。装甲服の中は血塗れだろう。

「我等の前に勇者無く、我等の後に勇者無し。さらばだ、リューネブルク」
「……」
オフレッサーがナイフで頚動脈を切った。血が噴き上がる、そしてゆっくりとオフレッサーの体が倒れた。

「オフレッサー上級大将は戦死した。これ以上の戦いは無用、降伏しろ!」

オフレッサーの部下達はその場で降伏した。
“俺に付き合うのは俺が生きている間だけだ、俺が死んだら降伏しろ。無駄死にするな”

オフレッサーの生前の言葉だったそうだ。オフレッサーは死に場所を求めていた。俺はその望みを叶えてやれたのだろうか。“敗者を侮辱するな、勇者として扱え” オフレッサーの声が聞こえる。

叶えたのだと信じよう。俺もいつか死に場所を求めるのだろうか? そうかもしれない、しかし少なくともそ
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