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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十五話 レンテンベルク要塞
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いう大仕事があります、万全な状態で戦いに赴いてもらわないと」
「……」

「大丈夫、陛下は御優しい方です。伯爵夫人がローエングラム伯と連絡を取ったからと言ってお怒りにはなりますまい」
「御心遣い、有難うございます」

「エーレンベルク元帥が伯を褒めておりましたぞ。才能と覇気に溢れた人物だと。少々覇気が有り過ぎるのが困ったものだとも言っておりましたが、まあ将来が楽しみですな。いや、お邪魔しました。ではこれにて失礼をします」
「……」



伯爵夫人の元を辞去し、執務室に戻ろうとするとマリーンドルフ伯が近づいてきた。少し緊張しているようじゃ。
「閣下、妙な噂が流れておりますが?」
「妙な噂?」

伯は何処か人気の無い所で話したがったが、私は時間が無いから歩きながら話そうと伯にいった。マリーンドルフ伯も止むを得ず僅かに斜め後ろに付いて話し始める。おそらく聞き耳を立てているものが居るじゃろう。

「先日のヴァレンシュタイン元帥狙撃事件ですが、軍の一部に加担するものが居るのではないかと……」
「……」

「侯はご存知では有りませんか?」
「初めて聞くが、それは証拠が有っての事かの?」
「いえ、それはあくまで噂ですので……」

噂か、その噂の続きはヴァレンシュタイン元帥が暗殺されかかった事から犯人はヴァレンシュタインの存在を邪魔に思うものではないのか……、そんな内容のはずだ。マリーンドルフ伯が緊張しているのも娘がローエングラム伯のところに居るからだろう。

「証拠も無しに疑うのはどうかの、貴族連合軍の謀略と言う事もあるじゃろう。乗せられてはいかぬ」
「なるほど……」

なるほど、と相槌を打ったがマリーンドルフ伯は納得してはいないようだ。まあ無理も無い事では有る。

「まあ何か有るなら憲兵隊が調べるであろう、我等は己の仕事をしようではないか、マリーンドルフ伯」
「はっ」

これで明日には一層宮中で噂になるはずじゃ、貴族連合軍の謀略か、それとも真実か。私が軍の関与を否定した事で、向きになって軍の関与を声高に言うものも現れるだろう。

伯爵夫人は大分こちらを警戒していたの。伯爵夫人の耳にも噂は入っているようじゃ。まあそう仕向けたのは私じゃが。

どう動くかの……。伯爵夫人自身多少の不安は有るのじゃろう。しかし直接ローエングラム伯に確認を取るか? まず取るまいの。この状態で直接連絡を取るのは危険なことぐらい彼女も理解していよう。その程度も分からずに宮中で生き残る事など出来ぬ。

となると連絡を取るのは……。さて石を池に投じてみたが、何処まで波紋が広がるかじゃの、第二、第三の石が必要になるかもしれん。石の名前はアドルフ・エッカートと言う事になりそうじゃ……。



帝国暦 487年 12月24
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