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幽雅に舞え!
紅玉の神秘
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。家族の期待の目も嫌っていたんだろう。俺はチャンピオンになると言って家を飛び出してしまったんだ。
 
 そしてその結果。才能のないボクが代わりに仕事を教え込まれ、家族のボクに対する厳しさはますます強くなった」
「じゃあ、ルビーも家を飛び出したのか?」
「いや、旅に出ること自体は家の後を継ぐための決まりみたいなものなんだよ。15歳になったら一度各地を巡り、たくさんのポケモンと触れることも重要だと習わしにあってね。ボクは身体も弱いし正直言って憂鬱な旅だったんだけど……君に出会えて、変わったんだ」
「そうだったのか……ごめんな、忘れてて」
「思い出した以上、もう気にすることはないよ。少しやきもきはしたけどね」
「そういえば……ルビーがシリアのことを疑ってたのも、それが理由なのか?昔は荒っぽかったって言ってたけど」
 
 今のチャンピオンとしてのシリアしか知らないサファイアには少し信じがたくはあるが、ルビーがこんな嘘をつくはずがない。事実として認め、聞く。
 
「そんなところだね。……はっきり言って昔の兄上はボクにも、いやむしろ、他の家族には宮司の跡取りとして接しなければいけない以上、ボクに一番きつくあたっていたから。だから正直、再会してあんな言葉を平然と口にしている兄上が信じられなかった。……でももう、それはやめにするよ」
「えっ?」
「やっぱりボクには兄上を信用できない。だけど……君は兄上を信じているんだろう?兄上を信じる、君を信じることにするさ。それがボクからの――今まで君に黙っていたことへの、誠意のつもりだよ」
「誠意なんてそんな……でも、ルビーとシリアが仲良くしてくれるなら、俺もそれが一番さ。……もう一つ聞いていいか?」
「何かな?」
「あの時は魔法陣みたいなものに俺が触ったからだと思うけど……なんでここでルビーはまた何かに憑りつかれたのかわかるか?」
 
 そのことか、と呟くとルビーは少し考えて。
 
「断言はできないけど……多分この壁画は、相当昔に書かれたものだ。そして書いた人間の強い意思が宿っている。その意思が……巫女としての能力を持つボクに憑りつき、乗っ取った。体を乗っ取られるなんてボクもまだまだだね……」
「わかった。じゃあまた変なことにならないように、ここを離れよう。エメラルドも助けを呼んできてくれてるはずだし……ん」
「彼のことはともかく……そうしようか」
 
 サファイアが差し出した手をルビーが取って、彼女は起き上がる。そして洞窟の外へと出ていった。これを機に、二人の絆は強く深まることになる――


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