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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
57.第七地獄・四聖諦界
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 天を舞う二つの破滅を呆然と見上げるリージュ・ディアマンテの心を支配するのは、自分の体が砂になって崩れ落ちるかのような虚脱感と、後悔だった。

 なんとなく分かる。彼はもう集団で行動することに我慢していられなくなったのだ。それは煩わしいだとか一人の方が早いだとかそんな一般的な言葉では言い表せない、思考からの脱落だ。彼はそうまでして頭の中から欠片もそれを考えられない程に狂わないと、命というものを忘れることが出来ない。

 忘れさせてはいけなかったのだ――そのためにリージュはここに来たのだ。
 なのに、精霊の力まで借りたのに、今のリージュは生き残るだけで精一杯だった。多少は手伝いもしたが、結局無駄にしかならなかった。だって今、オーネストは死ぬまで止まらない戦いへと飛び込んでいる。

 空中で何度も激突する力と力に交じり、氷と岩と黒鱗と血肉が降り注ぎ、60階層を紅く染めていた。
 それだけの痛みを抱えてもまでして、オーネストは『――――』を。
 視界が段々と白んでいく。結局――わたしはおばさんとの約束を――。

「伸ばしても伸ばしても、どうして届かないの………」
「あのバカ……カンッペキに暴走してやがる!!もぉぉ〜〜〜なんっでこういう肝心な時に人の話聞かないかねぇあのバカッ!!ドバカッ!!ミスター自己中ッ!!」
「へ?」

 突然の罵声に驚いて振り返ると、そこに気に入らなくて気に入らなくて只管(ひたすら)に気に入らないあの黒ノッポがいた。こんな状況で、もう引き戻せないほど深く戦いに沈んでしまったオーネストを見て、この男は絶望どころが盛大な苛立ちを剥き出しにして地団太を踏んでいる。地団太の直撃を受けた地面がミシリと軋んだ。

 アズライール・チェンバレット――死を告げる者。得体のしれない癖にオーネストの隣に並んでいたその男は、今の事態に唖然とすることもなく、絶望するでもなく、ただ純粋に苛立っていた。しかもそれは純粋に、オーネストが身勝手だからというそれだけの理由で。
 そして苛立っているかと思うと今度は急に肩をがっくりと落として項垂れる。

「ちくしょーああなる前に殺せないかなーって思ってたけど、やっぱそんなに甘い敵じゃねえか。有効打も見つかんねーとなると玉砕覚悟でガチンコするっきゃないかな………さてとっ」

 アズは懐を探り、数本の小瓶を取り出して立ち竦むリージュに突き出した。

「ほい」
「え?」
「これ、俺の残りのポーション。マズイことに回復はあと2本しかないから、使い道は大局を見る目のあるリージュちゃんに任すわ。俺はちょいとオーネストに喝を入れてくる」
「なっ……!!」

 絶句。この男は、あのオーネストを見てもまるでいつもと態度を変える素振りがない。
 アズライールの口元からは盛大に吐血した
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