暁 〜小説投稿サイト〜
仮面ライダーAP
第一章 鉄仮面の彦星
第10話 変身、APソルジャー
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「……あぐっ!」

 上も下も分からない、闇の底。その渦中に沈む彼は、やがて壁が崩れた先にある場所に落下した。

「……こ、ここは……?」

 薄汚れたなんらかの資料やコンピュータが散乱している空間。――そう。ここが彼らの目指す「地下研究所」だったのだ。

「そうか、ここが……。よし、ここのデータを全部処分して――」
「――そうはいかんな」
「……ッ!」

 だが。そう悟った瞬間――冷ややかな呟きが、波紋のようにサダトの聴覚に響き渡る。振り返れば、毒液を撒き散らしながらエチレングリコール怪人が降下して来ていたのだ。
 咄嗟にその場を飛び退き、サダトは警戒するように身構える。だが、いつでも殺せる相手と思っているからか、怪人の殺気は収まっていた。

「よくここまで落ちてきて、生きていられたものだな。どこまでも悪運の強い小僧だ」
「――ここのデータを基に俺達のようなAPソルジャーを大量生産するつもりなんだろうが……そんな事させるか! 徳川清山の解放なんて、させないぞ!」

 精一杯の虚勢を張るサダトとは対象的に、エチレングリコール怪人の姿勢は落ち着いている。

「勘違いするな。食前酒計画は俺の物する。だが――俺は徳川清山を救うつもりなど微塵もない」
「な、に……!?」

 エチレングリコール怪人から飛び出た発言に、サダトは目を剥いた。
 シェードの洗脳によって操られた改造人間は、徳川清山の忠実な奴隷となる筈。彼に逆らうなど、普通の改造人間なら有り得ない。

 ふと、辺りを見渡せば、ここの研究員だったと思しき白衣の男達は惨殺されていた。これも、あの怪人の仕業だとすれば――。
 そう仮説を立てたサダトは、ハッとして顔を上げる。

「そう。俺も貴様と同じ。既に洗脳から解き放たれている身なのだよ。シェードの奴隷など、偽りに過ぎん」

「まさか……そんな!」

 洗脳から解放されていながら、操られた振りをしてシェードに付き従っていた改造人間がいた事に、サダトは衝撃を覚えた。

「俺は俺達を迫害するこの世界が憎い。だがそれ以上に、俺をこの体に改造した徳川清山が憎いのだ。だからこそ、俺は徳川清山を滅ぼし、奴に代わってこの世界を支配する!」

 いままで抑えていた感情を解き放つように、エチレングリコール怪人は叫ぶ。

「そのためには力が必要だ。食前酒計画から生まれたAPソルジャーのデータは、その先駆けとなる」
「馬鹿な! 洗脳から解き放たれていながら、人間と敵対する道を選ぶなんて!」

 洗脳から解放されたなら、人間の心を取り戻した筈。それが、どうしてこのような野心を生み出すのか。
 ――近しい身の上でありながら、道を違えている事実に胸を締め付けられ、サダトは怪人に訴える。

「……ふん。俺
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ