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仮面ライダーAP
第一章 鉄仮面の彦星
第5話 愛するために
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(助け出さなくては……南雲様を、なんとしても!)

 愛する男との約束を破ってでも、捜索に向かう決断に踏み切らせたのだった。彼女は「家を出るな」というサダトの言いつけを破ると、勢いよくアパートを飛び出し、東京の街へと繰り出して行った。

 絶世の美貌を持つ彼女は、道行く人々の視線を一身に惹きつけ、時として色欲に塗れた男達に声を掛けられることもあった。
 だが、それら全てをかわす彼女は、一心不乱にとある場所を目指す。――彼女の胸中には、心当たりがあったのだ。

 ――それはかつて。No.5と呼ばれた改造人間と、7年前のテレビ局占拠事件の首謀者との決戦が行われた廃墟。
 そして今は、シェード残党が潜伏するアジトにもなっている。

 都会から程よく離れた地点であり、遮蔽物が多く入り組んだ構造でもあるため、彼らにとっては絶好の潜伏先なのだ。

 「仮面ライダー」と呼ばれているNo.5により、7年に渡る戦いで世界各地のアジトを潰された彼らは今、居場所を求めてこの場に集まっている。
 アウラは改造人間が持つ独特の脳波を感知し、その気配が集まる場所を特定していたのだ。

 人気がまるでない、僻地の廃墟。そこにいるだけで孤独感に押し潰されてしまいそうな、その魔境に足を踏み入れた彼女は――神経を研ぎ澄まし、怪人達の居所を追う。

(失踪から数日が経っていても、南雲様の御遺体は発見されていない。シェードが人手不足になっているという点を考慮するなら、改造人間にするために誘拐されたという線が強い。……なら、今もこのアジトに囚われているはず!)

 サダトの脳波を探し出そうと、アウラは瞼を閉じ、さらに感覚を鋭利なものにしていく。――その時。彼女の足元に砂利の坂から小さな瓦礫が転がって来た。

「……!」

 小さな埃が舞い散り、アウラは顔を守るようにそれを振り払う。

 ――刹那。禍々しい気配が、少女の第六感に轟いた。

 瓦礫が転がる坂の上にいる「何か」を見上げた彼女は、恐怖に屈しまいと唇を噛み締める。

「……!」

 彼女の眼前の先。

「……まさか貴様の方から、のこのこと来てくれたとはな。――エリュシオン星人よ」
「――シェードの改造人間っ!」

 そこには、シェードによってその身を改造された異形の怪人が佇んでいたのだ。

 青白い筋肉組織のようなものを剥き出した、人体模型を思わせる悍ましい姿。

 更に、その全身を得体の知れない、無色の粘液が覆っている。
 彼が一歩踏み出すたびに、べちゃり、という音が立つ。

 シェードの刺客……エチレングリコール怪人だ。

「さぁて……孕んでもらおうか、俺の子を!」
「――お断りよ!」

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