暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第42話 想い
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自身の気勢を最大限に練り上げ、剣を振りかざしていた。
 その構えを前にして……この場にいる全員が目を見開く。今まで何度も目撃してきた、王国式闘剣術の真髄となる技。

 ――弐之断不要を、前にして。

「姫様が、弐之断不要を!?」
「まさか体得していたというのか!? アイラックスとヴィクトリアにしか、極められぬと言われた弐之断不要を!」

 動揺するロークと父の言葉に耳を貸すことなく。ダイアン姫は、静かに――鋭く。ヴィクトリアを睨み据えた。

「……あなたの背中を追いかけて、もう何年になるでしょう。まさか、この技をあなたにぶつけることになるなんて……考えてもみなかった」
「姫様。弐之断不要は確かに、絶大な破壊力を誇る一撃必殺です。力量差を覆す、起死回生の技にもなりましょう。ただ、それは技に見合う筋力と気勢が伴って初めて成立するものです。あなたでは気勢が充分でも、その細腕のために己の身体を壊すだけです」
「無論、承知の上ですわ。――わたくしにとっては、命を削る技だということくらい」
「……!」

 ヴィクトリアの指摘を受けてなお、ダイアン姫は構えを崩さない。弐之断不要を自分が使うことで生じるリスクなど、覚悟の上なのだ。
 そう言い切ってみせた彼女の気迫に、女騎士は戦慄を覚えていた。木剣で軽く打ち合っただけで、尻餅をついて泣き喚いていた彼女を知るヴィクトリアにとって、今の彼女の姿はそれほどまでに衝撃だったのである。

「……帝国、勇者ァ……!」

 そして――その事実は、さらにヴィクトリアの胸の内にある黒い感情を滾らせて行く。
 今の彼女がある理由の一つが――帝国勇者への恋だったからだ。

 よりによって憎い仇に、自分が鍛え、見守ってきた姫騎士が奪われようとしている。その現状への怒りが、ヴィクトリアに纏わり付く呪いをさらに強くしているのだ。

『コワセ……ニクシミノママニ……!』
「殺すだけでは足りない。首を取り、四肢を刻み、その骸を衆目にさらしてやる! そして帝国人全てに、それを見せつけてやるのだ……!」
「そんなこと……絶対に許しません! これ以上、わたくし達は――もう、何も失ってはならないのですから!」

 そんな彼女に怯る気配も見せず、かつての師の教えに従い。ダイアン姫は、眼差しでヴィクトリアを射抜いて見せる。
 凛々しく、勇ましいその背中を見つめ、ロークは固唾を飲み――国王は険しい表情で見守っていた。対峙する二人の女剣士が放つ気迫は、他者の介入を決して許さない。

「……ならば簡単なこと。何も失いたくなければ――全てを奪い去ればいい」
「……本当に墜ちてしまわれたのですね。あなたの心が一欠片でも残っていたならば、決してそのような言葉は口にしなかったはず」
「わかるものですか。姫様に、何が
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