暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第41話 十字の傷
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国王とロークは口々に彼女を説得しようと声を上げる。だが――帰ってきた反応は、冷酷な眼差しだけだった。

「……帝国勇者に、ここまで侵略されていたとはな。国王陛下も姫様もロークまでも……。もはや、取り返しはつかぬか」
「な、なんだと……!?」

 そして――仕えるべき主君に向き直る彼女は。勇者の剣を、高らかに振りかざす。

「陛下。貴方様が帝国勇者に屈してしまわれた今、私達が懸命に守ろうとしてきた王国は滅びました。これからは――私がこの剣を以て、一からこの国をあるべき姿に再建します」
「ヴィクトリア……お主……!」
「そのためにも。まずは、貴方様に舞台から降りて頂かなくてはなりませぬ。……お覚悟を」

 やがて。問答無用、とばかりに剣が振り下ろされる――瞬間。

「――許しませんッ!」

 我に返る瞬間、弾かれるように飛び出したダイアン姫が、国王の前に立ち。手にした盾で、勇者の剣の一閃を受け止めるのだった。
 無論、彼女の力で受け流せるようなものではない。衝撃に耐え切れず、彼女は再び尻餅をついてしまった。
 だが、その瞳は不利な体勢になろうとも揺るぐことはなく。ただ真っ直ぐに、姉代わりだった女騎士を射抜いている。

 その瞳を見つめるヴィクトリアは――微かに、人の情を残した眼差しで姫騎士を見遣るのだった。

「姫様……」
「思い出しなさいヴィクトリア! その力で何を守るのか! 誰を守るのか! 何のために鍛えてきたのか!」
「わ……私、は……」

 怒りと悲しみをないまぜにした姫騎士の一喝を受け、ヴィクトリアの瞳に滲む情の色は、徐々に濃さを増して行く。……だが。

『オモイダセ。ウシナッタモノヲ。ニクムベキテキヲ!』
「う、ぁあがぁあああぁあぁあ!」

 勇者の剣に囚われた彼女の心は、再び闇に引きずり込まれてしまった。激しい慟哭と共に、ヴィクトリアは勇者の剣を勢いよく水平に振るう。まるで、邪魔なものを振り払おうとするかのように。

「姫様、あぶねぇっ!」
「あっ――!」

 その一閃が、ダイアン姫の首を刎ねる――直前。

「……ぉぉあぁぉあぁあッ!」

 痛みを押し、弾かれるように飛び出すダタッツは手にした盾を突き出し――それもろとも激しく切り裂かれて行った。弐之断不要の生傷を、さらに抉るように。

「あ、あぁ……!」
「う、嘘だろ、帝国勇者……!」

 ヴィクトリアの一閃に吹き飛ばされた彼は――ダイアン姫や国王の頭上を通り過ぎ、アイラックスの両手剣に激突する。
 だが、それだけでは到底勢いは止まらず。血だるまと化した彼の体は、両手剣と共に壁を突き破り――最上層から、転落していくのだった。

 弐之断不要を受けた傷にさらに斬撃を受け、この高さから落ちれば。さしもの帝国勇
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