暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第二章 追憶のアイアンソード
第20話 少年の意地
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 それまで保っていた戦いのリズムを捨て、竜正は元のがむしゃらな剣術でバルスレイに挑みかかる。だが、二人の間にある差は勢いで覆せるような甘いものではない。
 喉に痛烈な刺突を受け、竜正は再び吹き飛ばされてしまうのだった。

「げほっ……がはッ!」
「――これが真の戦い、というものだ。この壁が越えられぬまで、貴殿を戦場に立たせるわけにはいかん。まして、この帝国に伝わる秘宝である『勇者の剣』を託すことなどできん」

 冷酷なバルスレイの言葉が、竜正の胸を締め付ける。
 ――自分ではここまでが限界なのか。一日も早く母に会おうなど、甘かったのか。

(ごめん……母さん。俺は、俺は……)

 その弱い心が、竜正の身体から力を奪い――彼の剣を握る手を、緩ませて行く。
 もはや、今日の彼には立ち上がる力などない。

 誰もが……バルスレイさえもが、そう感じた瞬間であった。

「――勇者様ぁあっ!」

 こんなむさ苦しい騎士達の世界とは、最も無縁であるはずの。
 静かな一室で、療養しているはずの。

 幼い皇女の叫びが、風に乗って練兵場へ響き渡るのだった。

「こ……皇女殿下!?」
「み、み、見ろ! 皇女殿下がお見えになられているぞ!」
「なぜ皇女殿下がこのような場へ!?」

 その声を聞き取った観衆は、この帝国の頂点に近しい存在を目の当たりにし、騒然となる。城の窓から練兵場を見つめるサファイアの瞳は、その喧騒を気にも留めず、倒れ伏した少年に一途な眼差しを注いでいた。

「立って! 立ち上がって! そしていつか、お母様の元へ……けほっ、一日も、早くっ……!」

 病弱な身体を押した反動に苦しめられ、幾度となく咳き込みながらも、彼女は懸命に声を張り上げる。そんな姿を前に、騎士達は慌てて救援を要請し、騒ぎ続けていた。

「何をしているか貴様ら! 早急に皇女殿下を医務室へお連れせぬかッ!」

 そして――内心で驚愕しつつも、あくまで冷静に状況を見つめていたバルスレイは騒ぎ立てる騎士達を一喝する。次いで、彼女の叫びから……立場を越えた竜正との繋がりを悟るのだった。

「実績を立てる前から皇女殿下と関わりを持つ、か……。貴殿が勇者でなければ、今頃は不敬罪で首が飛んでいたところだな」
「ぐ、う……フィ、フィオナ……!」
「――だが、これでようやく貴殿が急成長した理由が読めた。さぁ、皇女殿下の御心に応えて見せよ。ここで屈するようなら、あと五年は修練を続けて貰う」
「……ッ!」

 鋭い眼光で自身を射抜くバルスレイと、竜正は倒れ伏したまま視線を交わす。その眼には――もはや、諦めの色はない。

(誰が……諦めるものかよ! フィオナがあんなにも、俺のために……頑張ったのに! 俺がここで挫けたら、全部が無駄にな
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