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ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第一章 邂逅のブロンズソード
第11話 離れていく心
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た頃とは、正反対の……街になるでしょう」

 バルスレイ将軍を見つめ、ダイアン姫はそう断言する。その言葉を受け――民衆は大いに沸き立つのだった。

「おい、聞いたか! もうババルオの支配は終わったんだ! この国に、やっと本当の平和が来たんだッ!」
「もう王国を苦しめるヤツはいない! もう、ババルオの時代は終わりだ!」
「王国万歳! ダイアン姫万歳ッ!」

 六年に渡るババルオの支配に苦しんできた人々は、その苦しみを喜びに変え、声を上げる。今日を迎えるために生きてきた、と言わんばかりの歓声だ。
 ダタッツの実態を思案していた一部の人々も、その吉報に心を奪われている。

「……」

 しかし。王国に住む人間の誰もが喜んでいるはずの、この狂喜の渦の中。
 その中心にいるはずのダイアン姫だけが、浮かない表情のままでいた。

 彼女の視線は未だ、正体不明の旅人に向かっているのだ。

「……ダタッツ、様」
「あ、ダイアン姫! お怪我は……!」
「構いません。私ならこの程度の負傷、どうとでもなります」

 声を掛けられたダタッツは慌てて駆け寄ろうとするが、ダイアン姫は片手を伸ばしてそれを制止する。それが遠慮ではなく――警戒によるものであることは、彼女自身の眼の色が物語っていた。

 その視線を受け、ダタッツも表情を引き締める。彼女が自分にそのような眼差しを向ける理由に、勘付いたのだ。

「ダタッツ様。あなた様のおかげでババルオの魔手から、この国を守ることが出来ました。父に代わり、王国を代表して感謝致します」
「いえ、そんな……。ジブンは当然のことをしたまでですよ」
「――帝国の剣術で帝国指折りの武人を倒すことが、当然のことですか?」

 どことなく事務的な言葉遣いで礼を言うダイアン姫に、ダタッツが遠慮するように頭を下げた時。彼女は問い詰めるように、語気を強めた。
 その剣呑な雰囲気に触れ、ダタッツの眉が微かに動く。次いで、戦いが終わったにもかかわらず緊張が解けない姫君の様子を見て、ハンナの表情にも不安の色が現れてきた。
 ダイアン姫に肩を貸しているルーケンも、ただならぬ状況に目を見張っている。

「ダタッツ、さん?」
「ひ、姫様? それってどういう……」
「ババルオの私兵達とアンジャルノンを打倒したあなた様の剣。速さや威力こそ桁違いでしたが、あの型は間違いなく帝国式闘剣術のものでした。――帝国出身のあなた様が、なぜババルオと戦う必要があったのですか?」
「て、帝国出身って……!」
「本当なのかい、ダタッツ君!?」
「……」

 近くで話を聞いていたルーケンとハンナは、驚愕の表情を浮かべてダタッツを見遣る。彼を見つめるその瞳は、困惑の色に塗りつぶされていた。
 ダタッツはその視線を浴び、いた
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