暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第一章 邂逅のブロンズソード
第10話 ユニコン幻想
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者を蹂躙する権利を持つ者のことだ」
「……力が強ければ弱者を蹂躙する権利がある――と?」
「無論だ。もし俺達が間違いであるなら、それは力によってのみ正されるだろう。そんな力があれば、の話だがな!」

 高らかに己の道理を語るアンジャルノン。その狂気を孕んだ眼は、見る者達の本能に恐怖を植え付けて行く。
 だが――最も近い位置からその眼差しを浴びているはずのダタッツは、一歩も退くことなく睨み返していた。

「あるさ」
「なんだと?」

 水平に構えられた銅の剣が、光を浴びて鈍い輝きを放つ。
 満身創痍となっているダタッツの一部として、その存在は一際強く煌めいていた。

「強い者が正しい。それこそが真実。確かにその通りだろう。――なら、お前はもう強者などではない」
「ふざけたことを。……虚勢にしか頼れないとは、惨めだな」
「虚勢かどうかは今にわかる。彼女達に正義がないと言いたいのなら――その「正義」の在り処、ジブンが教えてやる」

 刹那、ダタッツの眼差しは剣に勝る鋭さを放ち――アンジャルノンの巨体さえ飲み込む程の殺気を、迸らせた。

「……威勢だけの若造が!」

 その殺気に呑まれかけた巨漢は、自分をほんの一瞬でも怯ませた眼前の男に、激しい怒りを募らせる。
 この男だけは絶対に殺す。その思いを乗せた鉄球が、再び鎚の如き軌道を描いてダタッツの頭上に迫った。

「――ッ!」

 それを間一髪、上空に飛んでかわすダタッツ。――しかし、既にアンジャルノンは追撃の姿勢に入っていた。

「無駄だァ、どこに跳ぼうが俺の鉄球からは絶対に逃げられんッ!」

 アンジャルノンの丸太のような腕が、下から抉るかのように振り上げられる。直後、鉄球はその動きに追従し、滞空しているダタッツへと向かって行った。

「だっ、駄目ぇっ!」

 まるで生物のように獲物を付け狙う、漆黒の鉄塊。その姿に恐怖するハンナは、耳と目を閉じ悲鳴を上げる。
 ――ダタッツが撃ち落とされ、叩き潰される未来を予感して。

「……おぉおぉおッ!」

 だが。
 その未来は、幻に終わる。

 激突の瞬間。空中で身を翻したダタッツは、鉄球を蹴ることでそこを足場に変え、さらにジャンプしたのだ。
 軽やかに鉄球の追撃を回避した彼は、風に舞う葉のように地に降り立ち――再び剣を構える。……今度は、頭からは落ちなかったようだ。

「なっ……んだと!?」
「当たらなかったのが、そんなに不思議か?」

 嘲るような言葉で語る、その口調は氷のように冷ややかなものだった。今までのダタッツとは全く違う――別格の剣士が、そこに居たのだ。

「……えっ……あ……!」

 再び沸き立つ歓声の嵐。耳を塞いでいても響いて来るその喧騒に、ハンナは我に帰
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