暁 〜小説投稿サイト〜
Sword Art Rider-Awakening Clock Up
オレンジ&メタヴァーミン
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耳元で(かな)でられるチャイムの音に、シリカはゆっくりと瞼を開けた。自分にだけ聞こえる起床アラームだ。設定時刻は午前7時。

毛布の上掛けを剥いで体を起こす。いつも朝は苦手なのだが、今日は常になく心地よい目覚めだった。深く、たっぷりとした睡眠のおかげで、頭の中が綺麗に洗われたような爽快(そうかい)(かん)がある。

大きく1つ伸びをして、ベッドから降りようとしたところで、シリカはギョッと凍りついた。

窓から差し込む朝の中で、床に座り込み、ベッドに上体をもたれさせて眠りこけている人物がいた。侵入者かと思い、悲鳴を上げようと息を吸い込んでから、ようやく昨夜自分がどこで寝てしまったのかを思い出す。

あたし、キリトさんの部屋で、そのまま__。

それを認識した途端、顔がモンスターの火炎ブレスに(あぶ)られたかのように熱くなった。感情表現がオーバー気味なSAOのことだから、本当に頭から湯気の1つも出ているかもしれない。どうやらキリトはシリカをベッドでそのまま寝かせ、自分は床での睡眠に甘んじたようだった。恥ずかしいやら申し訳ないやらで、シリカは両手で顔を覆って()(もだ)える。

数十秒を(つい)やしてどうにか思考を落ち着けると、シリカはソッととベッドから出て床に降り立った。足音を殺してキリトの前に回り、顔を覗き込む。

黒衣の剣士の寝顔は、思いがけずあどけないもので、シリカは思わず微笑した。起きている時は剣呑(けんのん)な眼光のせいでかなり年上に見えていたが、こうしてみると案外自分とそれほど違わないかもしれないと思う。

寝顔を眺めているのは愉快だったが、いつまでもそうしているわけにもいかず、シリカはそっとキリトの肩をつつきながら呼び掛けた。

「キリトさん、朝ですよ!」

その途端、キリトはパチリと眼を開けると、瞬きを繰り返しながらシリカの顔を数秒間見つめた。すぐに慌てたような表情を浮かべ、

「あ……。ご、ごめん!」

いきなり頭を下げた。

「起こそうかと思ったんだけど、よく寝てたし……君の部屋に運ぼうにも、ドアは開かないし、それで……」

プレイヤーが借りた宿屋の部屋はシステム的に絶対不可侵で、フレンド登録した者でもない限り、どのような手段を用いても侵入することはできない。シリカも慌てて手を振ると、言った。

「い、いえ、あたしこそ、ごめんなさい!ベッドを占領しちゃって……」

「いやあ、ここじゃあどんな恰好で寝ても筋肉痛とかないしね」

立ち上がったキリトは、言葉とは裏腹に首をポキポキ曲げながら、両手を上げて伸びをした。思い出したようにシリカを見下ろし、口を開く。

「とりあえず、おはよう」

「あ、おはようございます」

2人は顔を見合わせて笑った。



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