第二章
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「では脚本の朗読会を開くが」
「恒例のね」
ワーグナーは作品を作るにあたって常にそうしている、知人達を集めて脚本の朗読会を開いてである。そうして脚本の不出来な部分もチェックしているのだ。
そしてだ、その朗読会にというのだ。
「彼も呼ぼう」
「それじゃあ」
「よし、これでな」
こうしてだった、ワーグナーは朗読会を開いた。ここでハンスリックも読んだ。そして。
ワーグナーは朗読会の後でだ、親しい面々に笑顔で話した。
「いや、朗読会は傑作だったよ」
「傑作?」
「傑作というと」
「ハンスリック君も呼んだが」
得意満面の顔でだ、ワーグナーは彼のことを上から目線から話すのだった。
「彼は脚本を読んでね」
「ああ、あの作品のだね」
「マイスタージンガーの」
「あれを読んで」
「それでだね」
「そう、実はベックメッサーはね」
マイスタージンガーにあるこのキャラクターのというのだ。
「彼をモデルにしたが」
「その脚本を読んでか」
「自分自身だと思って」
「それでだね」
「彼は怒ったんだね」
「そうだよ」
ワーグナーは得意満面の笑顔のまま話した。
「そして怒って席を立って帰ったよ」
「それはまたかなりだね」
「彼も怒ったんだね」
「自分のことを書かれていると思って」
「それでだね」
「そう、いや溜飲が下がった」
長年否定的に書かれているそのことに対してだ。
「実にね」
「それでその作品はだね」
「マイスタージンガーは発表するんだね」
「彼をそのまま出して」
「そうするんだね」
「そうだよ、そうするよ」
確かな声でだ、ワーグナーは話した。
「必ずね」
「では彼は舞台のうえでも有名になるね」
「今は批評家として有名だけれど」
「これからはね」
「そちらでも有名になるね」
「そう、なるよ」
絶対にとだ、ワーグナーは笑ったまま言った、こうしてハンスリックを揶揄したベックメッサーというキャラクターが出ているニュルンベルグのマイスタージンガーという作品は世に出た。
そしてそのマイスタージンガーを観てだ、人々はこう話した。
「あのベックメッサーは批評家のハンスリック氏らしいぞ」
「ああ、いつもワーグナーを批判しているか」
「あの人のことか」
「粗探しをしてるベックメッサーがそれか」
「新たな作品を認めない批評家ってことか」
「成程な、それじゃあな」
「ハンスリック氏はそうした人か」
次第にハンスリック自身への見方になっていった。
「意地の悪い頑迷な保守派か」
「新しいものを認められない」
「粗探しばかりする、か」
「そんな人なんだな」
「嫌な批評家ってことか」
こう思う様になった、そして。
ワーグナーは朗読会のことを自伝にも書いた、この勝
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