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独善者
第四章

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「国王より絶対の存在になるとは」
「この戦いは失敗だな」
「うむ、そうなってしまった」
「清廉潔白だからといってだ」
 そして能力が優れていてもだ。
「それが常にいいとは限らないか」
「自分が絶対に正しいと思う者が強くなるとだ」
「こうしたことにもなる」
「そうなのだな」
 クロムウェルの君臨をその目で見て気付いたことだ。
「こうなってしまっては遅いが」
「我々は過った」
「国王を抑えるつもりが国王以上に問題のある者を選んでしまった」
「これはもう終わるのを待つしかない」
「あの方が亡くなるまで」
 苦い顔で言うばかりだった、そして。
 彼等はクロムウェルが去るのを待った、そのうえで。
 彼が亡くなるとすぐに処刑された国王チャールズ一世の嫡子を迎えチャールズ二世とした。国王が再び戻ったが。
 彼等は苦い顔でだ、こう言った。
「国王の方がいい」
「護国卿よりはな」
「絶対王政も問題だがあれだけの独裁よりはいい」
「独善よりもだ」
 こう口々に言うのだった。
「これからどうなるかわからないが」
「もう彼の様な人物はいい」
「幾ら有能で高潔であっても」
「それがかえって恐ろしい」
 独善、過ぎ去ったそれの恐ろしさを噛み締めていた。それは確かに終わったが彼等の心には残っていた。 
 清教徒革命はクロムウェルの独裁を招いたと言われている、確かに絶対王政は倒れたがその結果絶対王政以上の独裁と独善を招いたとだ。オリヴァー=クロムウェルという人物への評価は様々だ。だがイギリスは彼以降護国卿ではなく王政復古を選んだ、このことは紛れもない事実である。独善は否定された。


独善者   完


                        2016・5・16
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