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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十九話 ウルリッヒ・ケスラーの肖像
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ケスラーがキスリングの考えを支持した。二対一、どうやら形勢は俺の不利のようだ。

「フェザーンの指示は任務を真面目に行なえ、だったとしたら?」
「本気で言っているのか、エーリッヒ」
キスリングもケスラーも呆れたような顔をしている。俺が冗談でも言っていると思ったらしい、生憎だが俺は本気だ。

「あの時、敵をおびき寄せるために陛下には病気になってもらった。忘れたのか、ギュンター」
「……」

「フェザーンからの指示は唯一つ、陛下の生死を確認せよ、陛下が崩御された場合には、その死をブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯にすぐさま知らせよ、そんなところだろう」
「!」

ケスラーとキスリングが驚いている。もっともそれは俺も同じだ。自分で言っていても信じられないところが有る。だが、考えれば考えるほど宮内省の顔の分からない男はフェザーンと組んでいるとしか思えない。

「フェザーンの狙いは帝国を混乱、分裂させ同盟との決戦に敗北させる事だったんです。カストロプの反乱もブルクハウゼン侯もそのために利用された。宮内省の協力者は陛下の健康状態を監視していた。それこそが帝国を混乱に陥れる最大の要因だから……」
「……」

そうか、陛下の健康問題か……。宮内省の顔の分からない男と内務省の協力関係はその時には出来ていたわけだ。だとすると両者の繋がりはもっと前だ……やはり三年前か……。あれは偶然ではなかったという事か。だとするとビーレフェルト伯爵を殺したのは……。

「私は間違っていたかもしれない」
思わず、呟くような声になった。
「間違っていた?」
「ええ。ケスラー提督、ビーレフェルト伯爵を殺したのはフェザーンじゃない、社会秩序維持局、いや内務省でしょう」

「どういうことです。三年前のあの事件には内務省は関わっていない筈です」
ケスラーは混乱している。

「関わっていますよ、“警察は大した事が無かった”、覚えていませんか」
「!」
ケスラーが目を大きく見開く。その目には驚愕が有った。

「まさか」
「そのまさかです、ケスラー提督」
気が付けば低い声で笑っている自分がいた。今日は笑いが多く出る。多分自分自身を笑っているのだろう。自分の間抜けさ加減を。

「どういうことです、ケスラー提督」
「警察もあの船を臨検していたが、船長に脅され碌に調査もせずに引き下がったそうだ。“警察は大した事が無かった”それは取調べで逮捕された船長が言った言葉だ」

キスリングの問いにケスラーが苦い表情で答えた。ケスラーはどうやら俺の考えを理解したらしい。
「警察は大した事が無かったんじゃない、最初から調べるつもりがなかった……。そういうことですね、司令長官」

俺はケスラーの言葉に頷いた。その通りだ、警察は最初から調べるつもり
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