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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
15話 柩の魔女
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「ほんの散歩のつもりでしたけどぉ、やっぱりリアルは小説よりも偶然に溢れてますねぇ。台本通りの丁寧な進行がイチバンですが、こういうのも案外悪くないですね〜」
「離れろ!」


 背中に抱き付いたまま何やら評するピニオラの声を聞きつつ、しかし、警戒心から込み上げる悪寒に従って拘束を振り払う。すると、重さが引っかかるような、振り回す感覚もなく、あっさりと離れて距離を置かれる。

 影に潜むような暗色のローブではなく、黒のタートルネックに白のレギンスという衣服の変更こそあったものの、視線が合った相手はやはり見紛うこともない少女の貌だった。
 第三層にてクーネを一度は殺害し、グリムロックと共謀してグリセルダさんの命を狙った張本人。
 自らが剣を取ること無く、スキルの仕様やフィールドの環境、果てはプレイヤーの精神まで利用しては引き起こした殺人さえ傍観者として観覧する。それこそ、常軌の枠に収まることのない異常者。

 俺からして、《敵》と目するに値する存在が、そこにいた。
 更に言えば、その後ろにひっつく小さな子供の姿も。


「あらあらぁ、怒らせちゃいましたか〜? もしかして、………ヒヨリさん、でしたっけ? あの娘くらいないと、抱かれ心地がお気に召さないとか? わたしもそれなりに自信があったんですけど、ちょっと心が折れちゃいそうですねぇ………というか、大きさだけで見るのは女の子には酷ですよ〜?」
「ふざけるな。こんな茶番のために俺に声を掛けたわけじゃないだろう? お前の隠蔽スキルなら、興味が無ければ無視だって決め込めたんだからな」


 威嚇の意を込めて低音になった声でピニオラに問うものの、まるで手応えさえなく、それこそ涼しい顔で流されてしまう。
 漫画でも何でもない、あくまでも現実(リアル)の延長線上にあるこの世界において、果たして殺気なるものが存在しているかというと疑問ではあるが、それでも剣呑な空気というものは如何なる相手であれ、多かれ少なかれ何らかの感情を抱いて態度に偏重を見せるとは思っていたが、彼女にとっては些事にさえならないらしい。どこまでも埒外の相手らしく、その得体を掴ませない不気味さは形容しがたいものがある。
 そんな内心を知ってか知らずか、俺の質問の内容を精査するように、顎に人差し指を当てては首を僅かに傾げること半秒。楽しそうな笑みとともに返答が向けられた。


「ん〜、そうですねぇ〜。わたしとしてはご挨拶までと思っていたんですけれどぉ、なんだかわたし、リンさんに探されていたみたいですし、こうしてお話してみるのも悪くないかなぁと思ってみちゃったわけですよ〜」


 俺の動向に勘付いている。
 《軍》の監視が敷かれている監獄エリアまで入り込んでストーキングされていたわけではないだろう。それらしい発言を
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