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STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「前編」
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【1】


 終業を告げるチャイム。
 夕焼けに照らされる正門を帰路につく生徒達が雑談混じりに潜っていく。
 グラウンドの方からは遠い喚声が聞こえ、
部活動に勤しむ生徒達がジャージ姿で練習機材を抱え東奔西走していた。
 涼風の中にも確かな熱を感じる、初夏の放課後。
 その中を、吉田 一美はただ一人で歩いていた。
 親友である緒方 真竹は、2年でありながらバレー部キャプテン、
しかも将来有望と目されるエースなので当然ここにはおらず、
良き相談役 (と個人的には想っている) である池 速人も調べものがあるとかで
図書室の方へと消えていった。
 本当に久しぶりのたった一人の静かな下校ではあるが、
その事を寂しいと想ったり不平を零したりするほど彼女は子供ではない。
 爽やかな初夏の風が肩口でキレイに整えられ繊細な装飾で彩られた
亜麻色の髪を揺らした。 
「……」
 ふと眼に入る、正門の前で佇むたくさんの女生徒達の姿。
 自分が通っている学園の者ではなく、近隣の制服がここに勢揃いと言った光景。
 あぁ知らないんだ、と少女は得心しその傍を通り過ぎた。
 ほんの二日前、ある二人の男子生徒 (と一人の女生徒) が提出した
突然の「休学届け」 により、学園内は蜂箱をひっくり返した様に騒然となった。
 どのクラスにも(授業中にも関わらず)机に伏した女生徒が続出し、
人目も憚らず廊下や階段の踊り場で哀涙する者も後を絶たなかった。
(中には教師もいたとかいなかったとか)
 二日経った今、流石に騒ぎは鎮静したが代わりに学園全体は
まるで喪に服したように沈鬱となっている。
 二人の 「休学」 の理由は、まことしやかに色々と囁かれたが
正確なコトは誰も解らないようだった。 
 確か母親が原因不明の病に伏したという噂を耳にしたが、
それが 「休学」 の真の理由かどうかまでは定かではない
(それでは友人の花京院 典明までが一緒に休む理由にはならない)
 自分も一度、その男子生徒の家(と呼ぶには自分と較べ次元が違い過ぎるが)
の前まで行ってみたが、城郭のような外壁沿いに黒塗りの高級車がズラリと立ち並ぶ
豪壮な門構えに怯んでしまい、訪ねるまでには至らなかった。
(!)
 そこで吉田 一美は歩みを止め、自分の抱いた思考に胡桃色の瞳を見開く。
(また……だ……)
 アスファルトの上で佇む少女の傍を人や車が通り過ぎるが
その音も存在も少女の意識から通り過ぎていく。
(また…… “アノ人” の事を……考えてる……)
 空条 承太郎。
 良い意味でも悪い意味でも、いつも周囲の注目の中心にあり、
尚かつその事を歯牙にもかけない強靭な精神の持ち主。
 他人と無意味に群れる事を極度に嫌い、社会的行動を無言の内に強制される

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