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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十三話 和解に向けて
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沖ノ島攻略作戦が完遂してのち、新たな艦隊編成が発表されてから数日が立っていた。この間、変則艦隊・混合艦隊等と呼ばれた不規則な編成については、賛成よりも不評の方が圧倒的であったが、葵は頑としてこれを変更しなかった。それでも何人かの艦娘は葵に直訴しに来たが、彼女の鋼鉄の意志に阻まれ、すごすごと部屋を退散していった。
「あ〜もう!!」
葵の執務室を出た麻耶はこらえきれないように叫んだ。
「どうしてなんだよ!!どうしてアタシが戦艦の指揮をとらなくちゃならないんだ!?」
「あらあら、いいじゃないの。こういうのって新鮮でしょう?」
麻耶の退出を廊下で待っていた愛宕がにこやかに言った。
「姉貴にはわかんないだろ!?旗艦じゃないんだから。・・・・艦隊旗艦の重圧ってとっても大変なんだぜ。戦艦ならともかく、重巡がそれをやるなんて――。」
「あら、いつもいつも『戦艦には負けねえ!』って言っていたのは誰だったかしら?」
麻耶が凍り付いたように動かなくなった。
「それは――。」
「まぁまぁ、何かあれば私に相談してくれていいから、一時の提督たちの気紛れだと思って頑張りましょうね。」
「・・・・・・・。」
先ほどの憤りが嘘のように消えた麻耶の肩を抱くようにして愛宕は執務室を離れていく。その様子を物陰からじっと見ていたのは、榛名、そして紀伊だった。
「やっぱり皆さん面白く思っていないようですね。」
榛名はと息を吐いた。
「そうみたいです。でも、乱暴な手だと承知の上で葵さんたちにお願いしたのですから、もう少し様子を見ましょう。」
そういう紀伊自身も複雑な思いを持っていないわけではなかった。


* * * * *

「旗艦ですか!?」
掲示板に張られた編成表を見、そして葵から直々に申し渡された時、思わず聞き返してしまった。葵は執務室の自分の机の前にある椅子に腰を下ろし、紀伊をソファに座らせている。
「そうよ。あなたが旗艦を務めるのよ。」
「ですが!その、私が・・その・・私、経験がありません!!」
「当り前よ。誰だって最初から旗艦として生まれてきたわけじゃないわ。」
「そうじゃなくて!!」
「どうじゃというの?」
そう言ってから葵は面白そうに笑った。反対に笑われる側にとっては面白くもなんともない。むしろ危機感ばかりが募り始めていた。
「紀伊。」
葵は先ほどまでの笑みを打ち消して、真顔になっていた。
「あなたのことは皆から色々と聞くわ。戦術眼に優れ、皆の特性を理解し、かつ自軍をいつも思いやる。それらを念頭に置いてあなたは常に戦う。もちろんあなた個人の技量も素晴らしいわ。でも、あなたには決定的にかけているものがある。わかる?」
「・・・・・・・。」
「あなたには自信がないわ。」
やはりというか、呉鎮守府でもここ横須賀でも異口同音に
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