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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第15話『黄金の魔法使いの憂い』
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俺の魔力はもう登録も切られちまったみたいだし、これは《神殺し》の魔力を分けて貰って、自分の魔力と混ぜ合わせる事で初めて使えるアーティファクトだ。後で解体して、中の魔石を取り出そ――」

 と、ジークが面倒そうに呟いた横で。
 ジークの後ろから顔を出したスィーラが、ふと机に投げ出された遠信機を手に取った。

 特に止める理由もないので気にする事もなく、ジークは再び『果ての平原』に渡る手段を再思考する。船で渡るのは時間的問題でまず無理だろう。飛龍便を使うという手も考えたが、時間的問題をクリアしたとしても、流石に人数が多過ぎる。複数の便を使えば解決するのかもしれないが、元より富豪用の移動手段として運営が始まった飛龍便は、その金額が馬鹿高い。村の資金を注ぎ込めば一本は買えるかもしれないが、二本目は無理だ。

 高速で思考を回転させ、新たな手段を模索しようとした所で、気付く。

『――また、珍しいケースだな、これは』

 遠信機から、そんな声が聞こえてきた事に。

「ーーっ!?」

 ジークが即座に反応し、座っていた椅子が木製の床に転がる。ドン、と鈍い音が脆い家を伝って全員に伝わり、凄まじい形相で声の元たる遠信機を睨み付けるジークに困惑し、中には怯えの表情を見せる者も居る。
 と、唐突に、ジークの背後から伸びた大杖が、ゴンっ!という鈍い音と共に、ジークの脳天を盛大に打ち付けた。

「あがっ!?」

「皆を驚かせないの。あんた強いんだから、ジークがそんなだとしてると周りはビックリしちゃうのよ?」

 メイリアがジト目でジークを見つめ、肩に担いだ杖を下ろす。ジークも打ち付けられた頭をさすりつつ、「すまない」と一つ謝って倒れた椅子を立て直した。

 椅子に改めて座ってからジークの視線は遠信機に移り、その先に居るであろう人物に口を開いた。

「……よう、師匠」

『ジークか。どうにも好き勝手してくれたそうだな』

「後悔はしてねぇよ。邪魔するなら、例えアンタでも剣を抜く。負けるにしてもな」

『興味無い。面子上除名はしたが、別に気にしてはおらんよ。せめてその(ファナトシオルグス)を返せ、という気分ではあるが……まあ、一本くらいはくれてやろう』

 おどけて言って見せる『彼女』に冷や汗を流しつつ、遠信機をテーブルの上に置く。その動作で周囲の大人達もその通話相手に気付いたらしく、驚愕したような顔でジークを見た。

「噂をすれば、って言うのかね。これは」

『……どうやら、また面倒ごとに巻き込まれているらしいな。どれ、話は聞いてやろうか』

 そうして彼女は。

 今代霊王――対魔傭兵(リ・メイカー)の長、《神殺し》たる彼女は、そう言って一つ溜息を吐いたのだった。







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