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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第五章 滅びゆく魔国
第55話 ダルムント防衛戦、開始
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なしも良い。
 また勇者パーティが潜入してくることも考えられるので、このスペースの警備をお願いすることにしていた。

 装備もかなりしっかり固めてもらっている。
 恐らく勇者と一対一で戦うことになってもある程度は張り合えると思う。

 勇者……。
 高確率で今回も来ているだろう。
 会わないことを願うしかない。

 ぼくがイステールから脱走した件、基本的には賊の犯行である。
 なのであの脱走事件が彼女の責任になっていることはないと思うが、「次は捕らえず即殺せ」という指示は当然軍から受けているはず。

 ……。

 ノイマール南の会戦で初めて会った時、ぼくが人間であると知り、兜越しでも伝わってくるくらい動揺していたこと。
 そして、イステールでぼくの首を斬れと命令されて躊躇していたこと。
 そんなことを思い出してしまう。

 イステールにて勇者という称号は、当たり前かもしれないが、人間と戦うためのものではないと聞いている。
 よって、勇者としての力はあくまでも人間の敵である魔族を滅ぼすための力である――
 そのように勇者候補生に対しては教育していたはず。

 つまり、幼少の頃から「勇者とは何ぞや」ということを叩きこまれている彼女からすれば、本来ぼくは戦う対象ではないのだ。

 それでも彼女は国には忠実なので、最終的に命令には従うと思うが……あの性格だ。恐らく吹っ切ることは難しいだろう。
 戦うときの彼女の心情をおもんばかると気の毒すぎる。
 それこそ不眠症再発は不可避であるに違いない。

 やはり今回はお互いに会わない≠ニいうことがベストのようだ。
 向こうも「できれば会いたくない」と思っているに違いない。
 いろいろ空気を読んでくれて、ぼくの前には現れない……それを期待していいかもしれない。

 そのようなことを考えていたら、魔力を回復しに来た魔族兵が臨時施術所にやってきた。
 さっそく施術にかかろうとした……が。

「ククク……これはカルラ様、ご機嫌うるわしゅう」
「うん。うるわしいよー」

 出たあッ。

「宰相様、ここは危険です。もっと後ろにいらっしゃったほうが」
「クックック、お前ごときに指図される謂れはないぞマスコット」
「マコトです」
「フン、どちらでもよい……。主人が軍のトップになったとはいえ、お前が奴隷である事実は変わらんぞ? 控えるがよい」

「いやホントに危ないんですよ。前もこんな状況で勇者が乗り込んできたんですから」
「そうなった場合はお前が勇者をくいとめよ。私はその間にカルラ様以下全員を避難させようぞ」
「まあ本当にそうしてくださるのであれば、ぼくとしても歓迎ですが」

「ククク、私は宰相だ。宰相は魔王様を補佐する国民最高の地位である
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