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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第三章 領土回復運動
第30話 投石櫓
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するんだよね?」
「もちろん全力で反対するが。経験的にこういうときの私の意見はあまり通らないものでな」
「……」

「そこまで読んでの敵の采配であれば素晴らしいことだ。ふふふ」
「だから笑いごとじゃないってば……」

 そのとき、塔に一人の兵が慌てて入ってきた。
 魔力切れになった攻撃魔法隊の者ではない。

「リンドビオル卿! 今から緊急の打ち合わせを行いたいそうです。至急本部へお願いします」

 ルーカスが「わかった。すぐに行く」と返事をする。

「ふふ。『嫌な予感ほどよく当たる』だな」
「……」



 ***



 会議はずいぶん長くやっていたようだ。
 ルーカスが戻ってきたときには、もうだいぶ日が傾いていた。

 緊急会議の内容は、やはり「櫓をなんとかしろ」というものだったそうだ。
 そして、宰相などの文官を中心とする出撃論者に見事に押し切られてしまったらしい。

「まあそういうわけだ。すまないが、やはり私の反対意見は通らなかった。司令長官も一応同調してくれたが、押し切られてしまった」
「あらら……魔王様は?」
「魔王様も内心は私寄りの意見だと思うが。基本的に会議の結果は尊重するおかただ」
「……」

「外に出てしまうと、お前の施術を効率よく受けることができなくなる。強化兵といえども、魔力が尽きてしまうとさすがに厳しい――そのあたりの説明はしたのだが。
 やはり城壁内部でパニックが発生してどうにもならなくなっているようでな」
「やっぱりそうなんだ」

 軍人だけで防衛方針を決められないというのはどうなんだろう?
 文民統制の要素があるというのは大いに結構なのだが、ここまで来ると単なる現場介入になってしまっている気がする。

 しかし……この状況。あまりにもルーカスの予想通りすぎるではないか。

「これ、まずいよね」
「ふふふ、まずいな」

 まーた笑ってる。そんな時ではないのに。

「外に出させること自体が敵の目的だろうからな。我々の突撃に対し、何も対策がないとは思えない。そして敵の潤沢な兵力を考えれば、目的が櫓の妨害であっても、我々はかなりの兵を割いて打って出なければならない。
 敵の思うつぼ、ということにならなければよいがな。ふふふふ」

「うーん、なんでこうなるのかなあ」
「まあ、こういう部分も含めて魔族の実力なのだ」
「……」

「なるべく被害が出ないよう知恵は絞る。お前たちは引き続きここにいるとよい。魔力切れになって帰還した者はここに来させるようにしよう」
「わかった」

 彼はそう言うと、城門のほうへ向かった。
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