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最後の無頼派
第四章

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「どうもね」
「そうだね、あれはね」
「後を追うかもね」
「そうなるかもね」
「思い詰めているから」
 それ故にというのだ。
「そうなあるかもね」
「そうだね」
「それで坂口君は」
 石川は壇に彼のことを尋ねた。
「より一層だね」
「うん、酒と薬にね」
「溺れていってるんだね」
「前以上にね」
 それこそというのだ。
「そうなっていってるよ」
「そうか」
「家も荒れていて」
 彼のその部屋の中がだ。
「そのうえでね」
「書いているんだね」
「お金が入れば使う」
 それも残さずだ。
「そんなのだよ」
「無頼だね」
 石川は坂口の状況を彼ととりわけ親しい檀から聞いたこう言った。
「まさに」
「そうだね、しか彼もね」
「長くは生きられないね」
「織田君や太宰君と同じでね」
「十年はね」 
 とてもとだ、石川はこうも言った。
「生きられないだろうね」
「そうだろうね、酒に薬に」
「そうした毎日だからね」
「だったらね」
 それこそというのだ。
「長くないよ」
「彼もね」
「田中君も」
 先に店を後にした彼もというのだ。
「もうね」
「そうだね、彼はもうね」
「危ういよ」
「僕もそう思うよ」
「そして僕達もね」
 壇は遠くを見る目になって石川に話した。
「こうして深酒に荒れた生活」
「無頼だからね」
「長くないだろうね」
「長くないならそれでいいさ」
 笑ってだ、石川は壇のその言葉にこう返した。
「それはもうわかってることだろう、お互い」
「うん、僕達は無頼だ」
「アウトローだ、文壇の主流じゃない」
 今もこうした考えが彼等の中にそのままある、戦後のその廃墟を見てそこから新しいものを既存の価値観やモラルまで否定して無頼に書いていくというそれが。
「だったらね」
「太く短く」
「そうして書いていくんだ」
「そう決めたからね」
「短い人生でもいいさ」
「そうだね、じゃあね」
「飲もう」
 バーのウイスキー、それをだ。
「今日も身体を壊すまで飲んで」
「そしてね」
「そう、また書く」
「女の子に会いたいならそっちに行って」
「家庭もことは忘れて」
「書いていこう」
「太く短く」
 二人になった時もこう言った、そして。 
 田中はこの時から少し経ってだった、死んだ。
 その死の状況を聞いてだ、石川はこの日は飲み屋で日本酒を飲みつつ壇と向かい合って話をした。この日も飲んでいた。
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